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在日と帰化 アイデンティティと格闘する在日フットボーラーの軌跡(後編)

在日コリアンは心の中で格闘する。自分のアイデンティティはどこにあるのか、と。それゆえに「帰化」への思いは複雑だ。彼ら自身の葛藤と戦いの軌跡を在日記者が描く。

text by 河鐘基 photo by Kenzaburo Matsuoka

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韓国ではブラジル人選手が帰化申請するも…

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李忠成【写真:松岡健三郎】

 くしくもその韓国サッカー界でも昨今、帰化を巡る動きが議論を呼んでいる。Kリーグ全北現代でプレーするエディーニョが、ブラジルW杯最終予選出場にむけて韓国籍の特別帰化申請(複数国籍認可の申請)を行ったが、棄却されたのだ。

 エディーニョは、韓国Kリーグですでに7年間プレーしている。頼れる傭兵として、サッカーファンからの人気も高い。全北現代の監督から、代表監督に就任したチェ・ガンヒ監督も、彼の攻撃力を買っており、本人の意思も含めて今回の帰化申請に至った。

 大韓体育協会(日本のJOCに相当)は特別帰化申請への推薦棄却について「当人は韓国で生活するための語学に堪能でなく、文化的な理解も乏しい。また、本人にそれを埋めるだけの意志が感じられない」と理由を明かしている。

 今回の件については、担当行政団体同士のコミュニケーション不足や、申請過程の不備もあり、チェ・ガンヒ監督は「残念だが仕方ない」とコメントを残している。大韓サッカー協会も、この決定に従うとした。

 ただ、いささか疑問を隠しきれないといった様子でもある。というのも、バスケットなど他スポーツでは帰化の前例がすでにあるからだ。

 大韓体育協会の担当者は、前述のコメントに「サッカーという種目の特別性を加味するとき安易な認可はできない」と付け加えている。推測するに、こちらの方が本来の棄却理由に近いのではないだろうかと思えてならない。これは「サッカーが与える社会的な影響力を加味すると、特別視はできない」と言っているようにもとれる。

 実際に、韓国のマスメディアの見立てでは、国民感情に配慮したという見解が一般的だ。サッカー関係者たちのなかにも、エディーニョの帰化に賛同できないという論調もある。

 その中にはこんなコメントもあった。
「韓国に対する愛が感じられない」
「国家代表は成績も重要だが、国民をひとつにする役割をはたす」
「帰化は問題ではないが、代表合流のための帰化というのは問題がある」

 これは韓国において、サッカーと帰化という問題が、まだまだマジョリティの感情に配慮しなければならない案件であるということを意味している。

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