コンセプトがバラバラだった過去3シーズン
降格したばかりの2010年、江尻篤彦監督が率いる千葉への期待は昇格ではなく、優勝だった。当時、古巣へ戻ってきた佐藤勇人も「昇格は当然」と考えていたそうだ。クラブの予算規模や戦力からすれば、そう考えても不思議ではなかった。しかし、佐藤勇人以下、選手たちはすぐに「J2はそんなに甘くない」と気づくことになる。
江尻監督は細かくパスをつなぐ攻撃と前線からの素早いプレスを組み合わせた、いってみればバルセロナ風の戦法で初のJ2に臨んでいる。開幕当初、「やり方は変えない」と宣言していた。
しかし、アウェイで勝ちきれない試合が続き、やがて落ち込みの時期を迎えるとロングボールを多用するなど方針にブレが生じ始める。もっとも、根本的な原因は前線からのプレスが空振りに終わったことにある。“バルセロナ”を目指して失敗するケースはだいたいこれなのだが千葉もそこでつまずいた。
次の11年はドワイト監督が就任、身長2mを超すオーロイを前線に据えたロングボール戦法で序盤は好調だった。だが、江尻監督のときもそうだったが、他チームが千葉に脅威を感じて対策を立ててくると、それを上回ることができなかった。オーロイ自身の負傷もあって、やはり途中で勢いを失ってしまう。
昨季は木山隆之監督が指揮を執った。山口智、兵働昭宏、谷澤達也など精力的に補強を行い、パスワークを重視したスタイルでスタートしながら途中でカウンター型を併用するなど、よく言えば柔軟、悪く言えば場当たり的な対応で上位につけていたものの、やはりおきまりの失速…。
そして、今季は鈴木淳監督。これまでと少し違うのは、監督交代でチームのスタイルが変わってしまうのではなく、昨季の土台のうえに継続性を持っていることだろうか。
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