遠藤が真に偉大な選手になるとき
――その通りですが、私の印象では彼もあなたの影響を強く受けて、以前よりもずっと走っています。その部分で進歩していると思います。
「それはいい。彼自身にとっても、クラブや代表にとっても。私も彼が、走ることの重要性を理解してくれることを望む。走るべきであることを。
今日のサッカーは、自分ひとりだけでボールをキープしてプレーすればいいものではない。(リオネル・)メッシにしろ誰にしろ、他のチームメイトと同じ仕事をしている。タックルが必要とあらばタックルするし、ボールを奪わなければならないときは、戻って守備に加わる。それこそがすべてを備えた完璧な選手だ。恐らく遠藤も、そういう風になれる」
――そこまで高く評価しながら、あなたは代表監督だったときから、試合後の会見などで遠藤を批判したのはどうしてですか?
「彼が理解したかどうかは分からないが、多くを期待していることを伝えかったからだ。もし理解していないのであれば、彼が新聞を読んでいるかどうかを問うべきだ。読んでいるのであれば、次に代表で集合するまでの間に、どうしていいプレーができなかったのか、どうしてそうなったのかを自問するはずだ。私の批判は、それだけですでにメッセージだ」
――同じことを、直接話して伝えなかったのですか。
「彼と話す機会はなかった。私に何が言えるというのか。今ですら、通訳を通してしか私の考えは伝えられない」
――それでもメッセージは伝えられたのでは?
「それはそうだが彼はいまだ現役で、しかも最高クラスの選手だ。その立場を遠藤が享受するのは当然で、私がとやかく言うべきことではない。
ただ、あまり多くを変えるべきではないにせよ、違う考え方で考えることも始めねばならない。サッカーに関する考え方を変えていく。自分を変革することも必要だ。彼ほどの選手なら、それができるはずだ」
――そうなって欲しいです。成熟し、完成されたひとりの選手の姿を、彼には見せてもらいたいですから。
「ああ、彼にはくれぐれもよろしく言ってくれ。もっともっと走るようになったときに、遠藤は真に偉大な選手になるのだから」
【了】
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