「今からでもフィジカルは上げられる。澤を見ればよく分かるだろう」
――32歳の今(※取材当時)でもそれは可能ですか。年齢は関係ないですか?
「いい選手であることに、年齢は関係ない。問題は誰が優れているかで、そこでは若さはアドバンテージにはならない」
――ときどき疲労が蓄積して病気になり長期離脱することがあり、例えば北京五輪もそれで棒に振りました。
「それこそ彼の病気だ。疲労で定期的に離脱する。何とかしないと、彼のサッカー人生を損ないうる。常にそれにつきまとわれるからだ。
しかしどんなときも疲れているというのはノーマルではない。一度徹底的に検査したほうがいい。というのも彼は、いつも走るのがきついように見えるからだ。またいつも脚が重い印象を受ける。彼がそうした問題を抱えているのはとても残念だ。早く解決して、必要なときに必要なプレーができるようになることを、願わずにいられない」
――では彼が、今からフィジカルを向上させることも可能ですか?
「もちろんだ」
――あなたの率いるジェフとガンバが対戦した2005年のナビスコ杯決勝では、ガンバのフィジカルに弱点があったと言っていましたが。
「ガンバの選手を分析したときに、彼らのフィジカル面にハンデキャップがあった。遠藤は、羽生直剛や山岸のようには走れなかった。つまりわれわれの方が、ガンバより余分に選手がいることになるわけだ。余分とまでは言わないが……。
ただそれは当時の状況であって、フィジカルの強化はまったく別だ」
――今も遠藤はフィジカルが十分とは言えず、代表でもときにそれが弱点となります。
「たしかに遠藤が、フィジカルで十分だったためしがない(笑)。だがフィジカルは、年齢を重ねてからも向上させることが出来る。私に言わせれば、改善は決して難しくない。フィジカルとはそういうものだ。もっと走れるようにもなる。
女子ワールドカップを見ただろう。日本のキャプテン、澤穂希はあれだけ走っているではないか。彼女はいったいいくつだ? 澤を見れば、年齢は関係ないことがよく分かるだろう。
また彼女には知性がある。戦術的に申し分ないし、身体能力も高い。攻撃でも守備でも、必要な場面には必ず顔を出し、得点まで決める。プレーの構築も含め、彼女がすべてを行っている。そのうえチームリーダーでもある。遠藤も少しは彼女を見習うべきだ(笑)」