中村俊輔は「銀と桂馬を足したような選手」
「大成功でよかったです」
イベントの盛況ぶりに笑顔を見せていたのが、大盤解説をつとめていた野月浩貴七段である。将棋界随一のサッカーファンであり、サッカーに将棋の戦法を盛り込んだ漫画「ナリキン!」の監修もつとめている棋士である。『ナリキン!』と横浜Fマリノスによるコラボポスターも野月七段が呼びかけたものだ。
野月七段といえば、サッカーを将棋の研究に取り込んでいることでも知られ、彼がプロになった直後の1997年頃、当時マンチェスターユナイテッドにいたデイヴィッド・ベッカムが得意とするピンポイントクロスを見て、そのイメージで「横歩取り△8五飛」という戦法を多用したというエピソードまである。世の中にはサッカーの戦術を将棋の戦法に応用してしまう人物までいるのだ。
この日の試合では、中村俊輔がフリーキックを直接決めて先制したが、今季の彼のプレースタイルを野月七段は「銀と桂馬を足したような選手」と評していた。
中盤で銀のようにマルチな動きをし、巧みにポジションを取りながらゲームをコントロールする姿、そして桂馬のような飛び道具も持っているプレーぶりを言い表したものだが、言い得て妙である。確かに無回転での意表を突いたあの先制FKは、まさに桂馬のような意外性があった。
野月七段のような視点で捉えてみると、サッカーと将棋の共通点が意外なほど多いことに気付くだろう。
一番わかりやすいのは、フォーメーションだ。サッカーにおける選手の配置や布陣もそうだが、相手の陣形を見てこちらの形を変える対応といったシステム的な噛み合わせは、将棋の駒組みや戦法による相性や駆け引きとも互換性が高いと言える。