「骨盤がおきている」と何がいいのか?
「骨盤が寝ている状態(骨盤後傾)は、骨盤の上に上半身が乗っていて、これでは骨盤と連動する股関節もロックされ、自由に動かせません。このような状況では、ボールを蹴ろうとするときの脚のふり幅にも制限がかかってしまいます。
また、股関節が思うように動かないときは、体が本能的に脚のふり幅を確保しようとするので、太ももの筋肉(大腿四頭筋)を無理やりにでも使って補おうとします。すると、太ももに負担が生じて、やがて疲労するので、ケガにつながる可能性が高まってしまうのです。
このように、どこかの箇所に負担がかかれば、人間の体は他の関節や筋肉でその負担を補おうとするため、ケガがおきやすくなるのです」
冒頭でメッシらを例にあげたが、中村氏によれば、ほとんどの外国人の骨盤はおきているという。黒人のアスリートが典型例だ。胸が前へ出て、お尻が突き出ている姿が想像できるだろうか。あの姿勢こそ、骨盤がおきている証拠。たとえば、世界最速王のウサイン・ボルト選手の骨盤もおきていて、爆発的な股関節の回転があれだけのスピードを生む原動力となっている。
対して、日本人はどうか。
姿勢の悪さ、たとえば、猫背を自覚している人は少なくないのではないだろうか。猫背というのは日本人独特の特徴だ。これは欧米人に対して、アジア人の骨格が云々、という話ではない。中国人や韓国人の姿勢はいい。欧米人から見て「歩いているときの姿勢が格好悪い」と感じるのは日本人だけだという。中村氏が続ける。
「日本人の大半は、骨盤が後ろに傾いてしまっているんです。昔のお侍さんはどっしりと構えて立つことができていて骨盤もおきていました。でも、現在の日本人は急激な生活様式の変化にいまだに対応できていないためか、椅子に座るときの姿勢などもとても悪く、骨盤が寝てしまっています」