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レアルの豪華攻撃陣はなぜドルトムントの前に無力だったのか

text by 河治良幸 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

徹底していたタイトな守備とリトリート

 マドリーは中盤の守備には全体が参加するが、自陣の深い位置まで攻め込まれると、残りをDFラインと2人のボランチに任せる傾向がある。ドルトムントはそこまで素早くボールを運んでおいて、レバンドフスキ、ゲッツェ、ロイス、ブラシュチコフスキの4人にSBかボランチの誰かが加わり、5~6人でチャンスを作り、フィニッシュに迫力を出していた。

 そうした攻撃には守備のリスクが伴う。マドリーはロナウドを起点としたロングカウンターも1つの得点パターンだが、そこは残る4~5人がタイトにケアしながら、守備に転じれば攻撃陣が素早く戻ることで危険を最小限に止めた。

 結局、4-1で“白い巨人”を打ち破ったドルトムント。守備にも攻撃にも厚みを出すことで、前線のタレント力、組織的な守備からのショートカウンター、最終ラインの対人能力といったマドリーの武器を出させることなく、自分たちの強みを発揮する。

 そのためには運動量と攻守のトランジションで相手を上回る必要があるが、その点においてクロップ監督の率いるドルトムントは前日、バルセロナに圧勝したライバルのバイエルンにも引けを取らないほど、組織として高いパフォーマンスを披露したと言える。

 第1レグはドルトムントの完勝だった。しかし、この大会を2度も制したモウリーニョ監督がこのまま白旗をあげるとは思えない。ホームの第2レグでビハインドをひっくり返し、“奇跡”を演出するために名将がどう打って出るか。

 それをさせないためにクロップ監督がどういう手を講じてくるのか。勝負のポイントは攻守の厚みにある。いずれにしてもドルトムントを賞賛するのは、残りの90分を見届けてからでも遅くはないだろう。

【了】

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