フットボールチャンネル

ドルトムント完勝。レアルを完全に封じ込めたクロップ監督の戦術

text by 植田路生 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

無策だったモウリーニョ

20130425_dortmund
クロップ監督【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 結果論ではあるが、モウリーニョのモドリッチ起用は当たらなかった。モドリッチがやや下がり目でボールをもらうことで中盤で数的優位をつくり、ある程度つないで崩すことを意識していたが、まったく上手くいかなかった。

 ドルトムントはボールホルダーへプレスに行くと同時に、その他に2人がパスコースを切る位置に動き、マドリーの攻撃を分断した。マドリーはパスを出しどころがなくなり、前線に運べないために、後ろへ下げる場面が目立った。

 1人かわしてもすぐに代わりの選手がプレスに来る。激しいプレスはドルトムントの持ち味だが、これがマドリーにはまった印象だ。マドリーの選手たちは能力があるが故に、個人で打開しようとする。これまではそれで上手くいっていたが、ドルトムントには通用しなかった。

 前述した連動した守備もそうだが、何よりドルトムントの選手たちは運動量が豊富だ。90分間のプレッシングが可能で、リトリートも早い。マドリーはカウンターでは完敗し、ポゼッションでの崩しでは無策に近かった。

 グループステージで対戦しているだけに、モウリーニョもドルトムントの戦術はわかっていたはずだが、対抗する術は見当たらなかった(もちろん、簡単に走り負けた選手たちも責められるべきだが)。

 モウリーニョはポルト時代、下馬評を覆し、チャンピオンズリーグを制した。よく語り草になるのが決勝トーナメント1回戦で下したマンチェスター・ユナイテッド戦だ。圧倒的不利との予想の中、モウリーニョは勝利し気鋭の戦術家として名を上げた。

 まだ2ndレグは残っているが、リードを守って勝ち上がり、その勢いでビッグイヤーを勝ち取れば、ドルトムントのユルゲン・クロップは最先端の戦術家として誰もが認める存在になるはずだ。

 その時、この試合が今までの最先端の戦術家・モウリーニョを超えた試合として後世にまで語られることだろう。

【了】

関連リンク

サッカー批評別冊 欧州サッカー批評 SPECIAL ISSUE07

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!