無策だったモウリーニョ
結果論ではあるが、モウリーニョのモドリッチ起用は当たらなかった。モドリッチがやや下がり目でボールをもらうことで中盤で数的優位をつくり、ある程度つないで崩すことを意識していたが、まったく上手くいかなかった。
ドルトムントはボールホルダーへプレスに行くと同時に、その他に2人がパスコースを切る位置に動き、マドリーの攻撃を分断した。マドリーはパスを出しどころがなくなり、前線に運べないために、後ろへ下げる場面が目立った。
1人かわしてもすぐに代わりの選手がプレスに来る。激しいプレスはドルトムントの持ち味だが、これがマドリーにはまった印象だ。マドリーの選手たちは能力があるが故に、個人で打開しようとする。これまではそれで上手くいっていたが、ドルトムントには通用しなかった。
前述した連動した守備もそうだが、何よりドルトムントの選手たちは運動量が豊富だ。90分間のプレッシングが可能で、リトリートも早い。マドリーはカウンターでは完敗し、ポゼッションでの崩しでは無策に近かった。
グループステージで対戦しているだけに、モウリーニョもドルトムントの戦術はわかっていたはずだが、対抗する術は見当たらなかった(もちろん、簡単に走り負けた選手たちも責められるべきだが)。
モウリーニョはポルト時代、下馬評を覆し、チャンピオンズリーグを制した。よく語り草になるのが決勝トーナメント1回戦で下したマンチェスター・ユナイテッド戦だ。圧倒的不利との予想の中、モウリーニョは勝利し気鋭の戦術家として名を上げた。
まだ2ndレグは残っているが、リードを守って勝ち上がり、その勢いでビッグイヤーを勝ち取れば、ドルトムントのユルゲン・クロップは最先端の戦術家として誰もが認める存在になるはずだ。
その時、この試合が今までの最先端の戦術家・モウリーニョを超えた試合として後世にまで語られることだろう。
【了】