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サッカークラブを超えた存在 ~スウェーデンの移民クラブを訪ねて~(後編)

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

クラブは現在と将来を結ぶ重要な架け橋となっている

 クラブ訪問から3日後、トップチームの試合を観戦するために再びローセンゴードを訪れた。観戦時点ではチームはディビジョン1(3部)に所属しているが、主力選手の故障などに悩まされ14チーム中12位に低迷。この日行われるBKルンド(4位)戦で勝利を収めなければディビジョン2への降格が濃厚という厳しい状況に置かれていた。

 FCローセンゴードは、スーペルエッタン昇格の可能性が消滅しモチベーションがそれほど高くないと思われていた相手に終始ゲームを支配され、結局1対3で敗北。後日、ディビジョン2への降格が正式に決まった。

 この試合を見ていて疑問というか違和感を覚えたのが、スタジアムの雰囲気だ。残留がかかった大事な試合にもかかわらず、観客はいたってのどかで、むしろ少数派のルンドサポーターのほうが1つひとつのプレーに大きく反応しており、いったいどちらのホームゲームなのかわからないほどであった。

 試合後、クラブ訪問時に顔を合わせた関係者と立ち話をすることになった。事実上の降格が決まってしまったにもかかわらず、彼の表情からは失望や落胆といった色が見えない。

 そんな姿、またクラブのフラッグを手にしながらはち切れんばかりの笑顔で走り回っている子どもたち、そして平穏なスタジアムの雰囲気を前にすると、改めてゼバ氏の「FCローセンゴードにとって大事なのはサッカーだけではない」という言葉が頭のなかで反芻する。

 ローセンゴードの住人にとって、サッカーはそれ以上でもそれ以下でもないのだろう。だが、恵まれているとは言えない不安定な日常を過ごす彼らにとって現在と将来を結ぶ重要な架け橋であることは間違いない。

 そして教育や雇用の機会を獲得しようとする若者のためのセーフティーネットとして、FCローセンゴードが果たす役割の大きさを今回の訪問で感じた。今後も「サッカークラブを超えた存在」として地域に貢献してほしい、そう願いながらスタジアムをあとにした。

【了】

初出:サッカー批評issue55

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