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サッカークラブを超えた存在 ~スウェーデンの移民クラブを訪ねて~(後編)

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

優勝は二の次クラブが取り組む様々な支援事業

 FCローセンゴードは以前から公共団体や民間企業らと提携することによって社会事業に積極的に力を入れており、そうした姿勢が国から高い評価を得ている。クラブは、マルメにおいて失業率が高い原因として、若者が学生時代に十分な初等教育や高等教育を受けていないからだと分析。こうした社会のレールから外れてしまった若者を社会復帰させるため、職業訓練や教育の機会を提供している。

 その代表的な例が、『ESF(欧州社会基金)』とマルメが財政支援している労働市場プロジェクト『MABIゴール』だ。2003年に立ち上げられたこのプロジェクトは、マルメにおける失業率改善のため、労働市場への参入を試みる若者や労働市場への復帰を試みる長期失業者(おもに移民が対象)を支援するための事業で、プロジェクトオーナーを務めているのがFCローセンゴードだ。

 こうした取り組みが報われ、クラブは2002年、多くの移民を抱えるマルメが毎年、多様性と平等性に大きく貢献した地域や団体に贈る「インテグレーション賞」を受賞した。

 プロジェクトが開始されてから今日まで、約400人の若者が職を得ているという。2010年にはスウェーデン相続基金財団の援助のもと、ローセンゴードに住む若者に教育の機会を提供するための事業『フューチャー・プロジェクト』を開始した。

 この事業のスローガンは「学校が大事!」。おもに7年生から9年生を対象に、ドロップアウトしてしまった子どもたちが復学するのを手助けしたり、高校進学や将来の職業など様々な相談を受け持ったりしている。さらに休日には、スポーツ大会を開催して地域の子どもたちの交流を深める役割を果たしている。

 2011年3月からは『MABIゴール』を継承した新プロジェクト『BOOST』を開始。『MABIゴール』と同様、若者を労働市場に送り込むことに力を入れている。

 ゼバ氏に上記プロジェクトについて簡単に説明していただいた後、ふと、ある疑問が頭をよぎってきた。FCローセンゴードというクラブチームにとってもっとも大事なことは何なのだろうか。「試合で勝つこと」なのか、それとも勝利以外のこと、たとえば「子どもたちにサッカーを通じて将来へのより良い機会を提供することなのか」。この質問をぶつけてみたところ、ゼバ氏は当然と言わんばかりに後者だと回答した。

「ローセンゴードは様々な点で厳しい地区です。若者たちがここで生きていくことは決して容易ではありません。クラブは、そんな彼らの将来のために何らかのかたちで手助けしたいと考えています。勝つこと、たとえばアルスヴェンスカンで優勝することは二の次です(笑)」

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