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サッカークラブを超えた存在 ~スウェーデンの移民クラブを訪ねて~(前編)

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki / Ryota Harada

「ゲットー」とも呼ばれるローセンゴード地区

 ここでクラブについて紹介する前に、まずはローセンゴードという地区について書かなければならない。

 冒頭でも記したように、1960年代に経済成長を遂げたスウェーデンは、労働力確保のために国内のみならず国外にも目を向けた。その結果として住宅の需要も高まった。

 スウェーデン第3の都市マルメに位置するローセンゴード地区は、そんな急増した住宅需要に対応するために誕生した。1960年代から70年代にかけ、ターゲ・エルランデル首相率いる社民党が進めた『100万戸プログラム』に基づいて開発された集合住宅地である。

 事業名のとおり、100万戸を超える住居が建設され社民党の目標は達成されたが、その一方、建物の大半がコンクリートの外壁をもつ外観のため、多くのスウェーデン人からは景観の悪化をもたらしたと批判され、入居は敬遠された。その代わりに国外からやってきた移民がこの集合住宅で生活することになった。

 ローセンゴードの人口は約2万3000人。うち約9割が外国のバックグラウンドを持つ。つまりスウェーデンの「原住民」はほとんどいない。そのため「ゲットー」と呼ばれることもある。出身地の構成に目を向けると、旧ユーゴスラビア諸国やイラク、レバノンといった中東諸国が多く占める。

 ローセンゴードはマルメのなかでも低所得、高い失業率と生活保護率で有名な地区だ。2009年時点での失業率は62%、生活保護受給率は21%にものぼり、スウェーデンの移民統合政策の失敗例のように言われることもある。ちなみに、スウェーデンには「ローセンゴーズ・スヴェンスカ」(ローセンゴードのスウェーデン語)なる単語があり、これは同地区のムスリム(イスラム教徒)系移民独特の訛りがあるスウェーデン語のことを指す。

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