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A REVIEW OF FOOTBALL BOOKS サッカー版「ぼくの採点表」 第7回 『サッカービジネスの基礎知識 「Jリーグ」の経営戦略とマネジメント』

書評欄の失墜が叫ばれて久しい。読者を楽しませる芸もなければ信頼性もアヤシイ。本企画では新しく出されたサッカー本すべてを洞察し、採点する。2012年1月24日から2月29日までの実用系以外のサッカー関連書をピックアップしていく。

『サッカービジネスの基礎知識 「Jリーグ」の経営戦略とマネジメント』

著者:広瀬一郎
採点:☆☆☆☆
(東邦出版・1500円+税)

『サッカービジネスの基礎知識 「Jリーグ」の経営戦略とマネジメント』

 Jリーグ創設20年の節目に刊行されたサッカーBIZ志向の人びとへの指南書である。

「Jリーグ創設の戦略と制度設計」と「『J』後のサッカービジネス」による2部構成――と書けば教科書然としていてとっつきが悪いが、サッカー史や無理解が横行するスポーツの公共性にかかわる読み物として面白い。とくに総論にあたる冒頭の文章はアメリカの気鋭経済学者タイラー・コーエンの明晰さを思い出させる。

 広瀬といえば、広告代理店電通時代のワールドカップ招致活動とWebサイトのスポナビ創立者というイメージだったが、2002年以降は学究的な活動に主軸を移している。スポーツ価値の再認識がライフワークのようで、スポーツBIZ面での結論――「指定管理制度」と「CRM(CustomerRelationship Management)」がJリーグやプロ野球のような日本のプロスポーツリーグ産業の成否を決める大きな要因になる――に8年前に至ったことが本書で明らかにされる。

 第2章ではエポックメーキングとして評価されるべき2011年6月の「スポーツ基本法」の制定とそれに附則するスポーツ庁設置の検討、さらには、2010年8月の文科省による「スポーツ立国戦略」の策定についても述べているが、著者自身は世論の盛り上がりを感じていない。

 講義でいえば「脱線」にあたる括弧の中のホンネが面白い。業界の内側を知る強みを活かしたありがたい鳥瞰/虫瞰図的な整理と相まち、サッカー関係者たる者、内なるエコノミストを飼いならさなければの心境にもさせられる。著者自身も新たな優良市場として注目する東アジア向けに翻訳されるべき一冊。81点。

(元バルサ最高責任者=副会長フェラン・ソリアーノの本『ゴールは偶然の産物ではない FCバルセロナ流 世界最強マネジメント』に高い評価を与えておられますが、自書のほうが格上だぐらいに是非思っていただきたいもの)

【了】

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