来シーズンを占う、今シーズンの残り試合
攻撃面でもプレー内容は良くなっている。ストーク戦ではチーム全体のパスをつなぐ意識が低く、FWファン・ペルシーが1人で仕掛けていったこともあって、香川自身もあまり絡めなかった。ウェストハム戦では縦に攻め急ぐのではなく、ボールを回しながら、DFブロックの間に入ってくる香川へのパスを起点にして崩そういう意識が感じられた。
香川は周りを“使う”側の選手ではなく、周りに“使われる”側の選手だ。香川自身がどれだけ良いプレーをしようと思っても、香川の動き出しを見てくれる選手がいなければ、輝くことは難しい。
その点では、ウェストハム戦の2点目のゴールにつながる縦パスを出したキャリックを筆頭に、トップ下でありながらボランチの位置まで引いてパスを出す側に回っていたルーニーなど、香川を使える選手が増えている印象はある。
今シーズンのマンチェスター・Uはサイドからのクロスにファン・ペルシーが合わせる形がハマって、シーズン中盤から独走状態を築いた。しかし、単純明快な攻撃パターンは読まれ、エースも2カ月以上ゴールから遠ざかるなど、チームはやや停滞気味だった。
また、リーグ優勝という結果は手に入れたが、チャンピオンズリーグはベスト16で敗れた。レアル・マドリー戦ではナニが不運な判定で退場した側面はあった。それでも、他のチームと比較したとき、マンチェスター・Uのクオリティーがワンランク劣っていた印象は否めなかった。
とにかくハードワークをして、サイドから放り込んで後はFW次第。そんな古いサッカーからの脱却を図らなければ、マンチェスター・Uがヨーロッパの覇権奪回は難しい。そのことは、ファーガソン監督ももちろんわかっているだろう。
幸いにしてリーグ戦の優勝はほぼ決まっており、残り数試合を実験に使うこともできる。ここからの香川の起用のされ方と、チームの目指す方向性は、来シーズンを占うものになるだろう。
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