求められるジョーカー的な選手
首位神戸の背中を着実に視界に捉え始めた大阪の雄にも、解消しきれていない悩みがある。それは、攻撃の切り札の貧弱さだ。
「悩みです。そういう選手が出てきて欲しい」(長谷川監督)
松本山雅戦のベンチワークには、そんな指揮官のジレンマが透けて見えた。清水東高校時代の先輩が3枚のカードを切り、攻守にテコ入れを図る中、ようやくG大阪が投入したのが79分の阿部浩之だった。
東京V戦以降の3試合では序盤から試合を支配し、決定機を作るが故に、攻め疲れを見せている感は否めない。本来であれば山形戦で懲罰交代を強いられた平井将生には長谷川監督も「将生がキーマンになるかも。二川が後半30分ぐらいで疲れてきた時のカードがなかったが、将生が使えるようになれば更に攻めは良くなる」と評価する。
しかしながら、平井は途中交代からわずか20分で屈辱的な(しかも当然である)交代を命じられ、松本山雅戦ではベンチからも姿を消した。
レアンドロと倉田は連携面でもチームタスクとしてもファーストチョイスであるは間違いないが、全盛期のG大阪を支えた播戸竜二や山崎雅人、佐々木勇人のようなゲームチェンジャーは不在。
「最近、交代で出た選手が物足りないので、途中出場した選手が今までの選手よりも活きのいいプレーを見せれば、さらにチームの勢いは出る。途中で流れを変えられる選手やジョーカー的な選手が必要」と長谷川監督も胸の内を明かす。試合開始から5速ギアに入った好調な攻撃陣のギアがダウンした際に、再び加速出来ない問題は、チームが抱える懸念の一つとなっている。
負傷がちなパウリーニョにさほどの期待が出来ない今、台頭を待ちたいのは阿部や川西翔太らの現有戦力。「途中から出た阿部と川西が本当にアグレッシブにプレーしてくれたのが嬉しかった」という長谷川監督の言葉が印象的だった。
求むジョーカー。ただし、守備をさぼらず、点も取れる選手に限る――。ハードルの高い「募集要項」をクリアする選手が現れたとき、G大阪は真の強さを手にする事になる。
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