風間監督が求める守備のタスクとその理由
風間監督が選手達に求めている守備のタスクは、「自分たちの陣形を崩さないで守ること」である。乱暴に言うと、積極的にプレッシングをかけるのではなく、自分のポジションを崩さずにパスコースを消していく守り方だ。
ただこれは、狙い通りに機能しないと、ピッチ上でボールホルダーに対するアプローチが定まらず、ズルズルと下がり、自陣ゴール前に張り付いて構える現象が起きてしまう。現状をみる限り、守備のタスクを忠実にやり切ることがうまく機能していない時間帯が目立っている。
この横浜FM戦の前半は、まさにそれを象徴する試合だった。
ボールホルダーに自由にパスを回され、ゴール前でも余裕を持った攻撃を受け続けるなど、苦しい場面に何度も晒された。名手・中村俊輔に何度もチャンスを演出されながらも、守備陣が水際で耐えていたが、前半終了間際にCKから失点を喫した。決勝点となった後半のゴールもCKによるものだが、それ以上にセットプレーを何度も与えるほどに押し込まれ続ける時間が長過ぎたことを指摘せざるを得ない。
そもそもだが、なぜ風間監督はこのような「自分たちの陣形を崩さないで守ること」を求めるのか。
風間監督が就任したのは、ちょうど昨年4月のことだ。通常であれば、まずはどうやってゴールを守り、相手からボールを奪うか、という守備組織からチームの整備を行うのが常識だろう。
しかし”非常識”とも言える攻撃的なサッカーを掲げる風間監督のアプローチは真逆だった。どうやってボールを奪うかではなく、いかにボールを失わないかだった。ボールを持っていることを前提にチーム作りを始めた。なぜそんなやりかたをするのか。理由を聞くと、こう説明している。
「守備から入ると攻撃の自由度がなくなってしまう。例えば、マンマークで守っているチームは、自分たちがボールを持ったら攻めなくなってしまうことが多い。自分の責任を守備に置いてしまう。日本の選手というのは、どっちかに偏ってしまうことが多い。でも守備を評価する人は多い。相手に合わせていく作業だから、見ている方もわかりやすいんだろう」