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これからのJクラブの経営モデル ~ハイブリッド型スポーツクラブの可能性~

text by 谷塚哲 photo by Kenzaburo Matsuoka

Jクラブ3つの事業は株式会社で行えるか?

 Jクラブには、大きな3つの事業がある。それは【1】興行(試合)、【2】普及、【3】育成である。この3つの事業を今まで株式会社で行ってきた。しかし興行主体のJクラブにおいて普及や育成は長期的で収益に結びつきにくい事業であるため、なかなか本腰を入れて行うことができない。また株式会社とは株主に利益を配当すること(=営利)が大前提のため、利益に結びつきにくい事業は株主利益に反することにもなる。

 いくら配当をしないとはいえ、赤字の垂れ流しでも良くない。だからこそ直接的に利益に結びつきやすい事業を優先せざるを得ないのだが、普及と育成はJクラブにおいて必ず行わなければならない事業であり、将来的な収益に繋がる。しかし、株式会社という組織形態の中では、短期的な利益を出すことが優先されがちである。

 この葛藤は興行、普及、育成という性質が異なる3つの事業を株式会社で行ってきたからこそ生まれるものだ。ならばこの3つの事業を性質によって営利、非営利に分け、本来の性質にあった組織形態で行うことの方が理にかなっている。収益を求める興行は株式会社、長期的な地域に根付いた事業を行う普及や育成は非営利法人と、組織形態を分けることで効率的な組織運営が期待される。

非営利法人のメリットを考える

 プロスポーツクラブが非営利法人を活用することのメリットは主に3つある。1つ目は地域との距離が近くなること。未だ親会社の支配下にあるJクラブは、いくら地域での活動を積極的に行っていても、親会社の色は隠せない。いざとなれば地域の意思より親会社の意向を聞かざるを得ない。これではいくら地域密着を掲げたところで本当の意味での地域に根付いたクラブとはいえない。

 一方、非営利法人の意思決定は、原則非営利法人の会員がひとり一票を持つことから、会員の意思の総意がクラブの意思となる。会員は自らの意思をクラブに伝えることができるのである。2つ目は税制の優遇。非営利法人には税制の優遇があり、特にスポーツ指導の対価(スポーツ教室やスクールの会費や参加費など)は原則非課税である。3つ目は公的支援。

 公共スポーツ施設を利用せざるを得ないビジネスモデルであるJクラブは地方自治体の協力は欠かせない。通常、地方自治体は株式会社との付き合いには慎重になるため、非営利法人を活用することで地方自治体との距離を埋めることができる。

 また今ではスポーツ振興くじ助成(toto)により、グラウンド芝生化、クラブハウスの建設、バスの購入、マネージャー人件費、スポーツ活動費などの助成金が得られる可能性が高い(助成金の申請対象団体は非営利法人であり、株式会社では申請できない)。実際に湘南ベルマーレやセレッソ大阪、東京ヴェルディなどは非営利法人である総合型地域スポーツクラブを持ち、こういったメリットを活用しているのである。

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