監督の色が薄い現代表
ザッケローニ監督には、ふたつの顔がある。
前任者からチームをうまく引き継いで、選手の力を引き出した柔軟さを備える一方で、独自のシステム、戦術に強くこだわる頑なさも垣間見せてきた。
果たして、どちらが彼の本質なのか――。
ザッケローニ監督が初めて日本代表を指導したのは、10年10月1日のことだった。4日後には初陣となるアルゼンチン戦が、その4日後には韓国戦が迫っていた。
指揮官の頭をさらに悩ませたに違いないのは、その3か月後にアジアカップが控えていたことだった。最初の国際大会を迎えるまでに与えられたのは、2試合の親善試合と3週間ほどの合宿期間。チームを一から作る余裕はなかった。
一方、スタンドから観戦した2試合の親善試合(10年9月のパラグアイ戦、グアテマラ戦)や、合宿で実際に指導してみて、選手の能力の高さ、チームとしての完成度の高さにも気づいたのだろう。
こうして「4-2-3-1の布陣」「遠藤保仁、長谷部誠、本田圭佑を中心にしたチーム編成」「パスをしっかりつないでビルドアップするスタイル」をそのまま生かし、効率的なプレッシングなど最低限の戦術だけ植え付けてスタートすると、チームを巧みにマネジメントし、アジアカップで見事に優勝を飾った。
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