魅惑のフォーメーション[3-1-4-1-1]とは?
安間監督が口にする”一人多い12人でプレーしているように対戦相手に見せる”という戦い方。それと密接な関係にあるのが、今季のカターレ富山が採用している[3-1-4-1-1]という布陣である。
3バックの前にアンカーを配置し、中盤は4枚がフラットに並ぶ。その前にトップ下がおり、ワントップとの縦関係を形成しているのが、大まかな特徴といえる。正直、見慣れないユニークな配置といえるだろう。
「これは(12人に)見えると思いますね。シーズン前のキャンプでやっていたら、対戦相手の監督からも『どんどん人が出て来るから、掴み切れなかった』、『この布陣はどう並んでいるんだ?』などと不思議がられましたから」(安間監督)
もちろん、配置の工夫だけで相手よりも一人多く見せられるわけはない。この[3-1-4-1-1]システムを機能させるカギを握っているのは、真ん中のエリアにいる4人の選手達である。レギュラー選手で言えば、アンカーの森泰次郎、中央のキム・ヨングンとソ・ヨンドクの韓国人コンビ、そしてトップ下の朝日大輔がそうだ。
ダイヤモンド型の関係で構成されたこの4者が、中盤で円を描くようにタッチ&ムーブを繰り返していくことがポイントになる。詳しくは明かせないが、その際のボールの動きと4人の流動的なポジショニングに、対戦相手の目を「12人いるのでは?」と錯覚させるような秘密があるという。
なかでも、このメカニズムの心臓となるソ・ヨンドクとキム・ヨングンの韓国人コンビの意識漬けには安間監督も苦労したそうである。ボールテクニックがあっても、機動力がなければ、十分に機能しないからだ。
「ヨングンとヨンドクはボールを触りたいし、引いてきてボールを受けるタイプ。でもそれでプレーが終わってしまっていたので、『それだけでは試合で使わないよ』と言い続けていました。うまい選手をどれだけ動かすか。それが大事なんです」(安間監督)
中央だけではない。中盤の両サイドにいる、大西容平や木村勝太などもどんどん中盤の局地戦に顔を出していく。カウンターになれば、逆サイドからは3バックの両端にいるセンターバックもダイナミックに走り出している。
このように試合中、神出鬼没の動きを見せる富山の選手たちに、対戦相手はさぞかし面を食らっていることだろう。「ウチはスカパー!の映像で映っていない場所からもガンガン走り込んで来ていますから、スタジアムで見るのが一番ですよ」と指揮官も笑う。