高額課税にリッチマンは海外へ移住
昨年5月、フランスで、17年ぶりに社会党が政権を奪回、フランソワ・オランド内閣が発足した。オランド大統領が掲げた最大の公約は雇用促進など、停滞する経済を好転させること。
具体的には、13年に3兆円の財政赤字を削減することを目指に挙げているが、歳入を増やす方法の1つとして、政府が採用したのが、富裕層への増税だ。しかしその額が常軌を逸していた。世帯年収が100万ユーロ(約1億2500万円)を超えると、なんと所得税は75%。
これに社会保障費や、固定資産税などを合わせると、場合によっては100万ユーロを超えてしまう、つまり、収入よりも納税額が上回ってしまうのだ。お金があるところから取るというのは、一見、合理的に聞こえる。
国内の世論調査でも、60%がこの案に賛成、という結果を目にしたこともある。しかし本来財布の紐が堅いフランス人。庶民はもとよりお金を使わないのだから、これでお金持ちの懐を圧迫すれば、さらに経済は停滞するし、企業も国外に出て行ってしまうだろう。
現にこの案に反発して、すでにフランスを代表する名優ジェラール・ドパルヂューは富裕税が13%のロシアの国籍を取得。非難する政府に「これまで45年間で1億4500万ユーロもの税金をフランスに支払ってきた」と捨てゼリフを残した。
また、欧州でもっともリッチマンの一人でルイヴィトンなどの高級ファッションブランドを保有するグループ会社の最高責任者ベルナール・アルノー氏も、隣国ベルギーに国籍を移してしまった。
今年1月には、憲法評議委員会でこの75%課税案は違憲と判断されたため、正式な施行までにはまだ練り直しがあるだろうが、この先も、富裕層のフランス脱出は続きそうだ。