課題はオフ・ザ・ボールか
バイエルンの守備は強く的確なだけでなく、しつこい。そして互いが互いを助け合って、鉄壁のディフェンスは成り立っているということを、身を持って証明された。それでもサイドエリアやDFラインの手前からのドリブルは、堅守のバイエルンにとっても小さくない脅威だったのは間違いない。61分には左サイドからミュラー、ラーム、マルティネスを突破し、ミドルシュートでGKノイアーのセーブを強いたのだ。
その乾がより完璧に封じられたのはオフ・ザ・ボールだ。乾と言えばドリブラーのイメージはあるが、日本代表のザッケローニ監督は「ドリブルよりも彼のオフ・ザ・ボールの動きに期待している」と強調した。そして乾自身も「自分は長めのランニングに自信があるので、ワイドからでもディフェンスの裏を突くことを意識している」と語っている。
乾はバイエルンの守備に対しても、得意のフリーランニングを何度も試みた。しかし、相手の組織的なライン統率に対してタイミング良く裏を突けず、飛び出しからの仕掛けがボアテンクのタックルに阻まれた場面も、オフサイドの旗があがった。
バイエルンを相手に、しかもチームが守備的な戦いを強いられながら、何度も前を向いてボールを持ち、強引にでもラストパスやシュートに持ち込んだ乾の才能は、ブンデスリーガでも高い水準にあることは間違いない。
ただ、だからこそ彼の突破、そして飛び出しを阻んだバイエルンの守備を超えるために、どうしていくかを問いかけられた、そんな試合ではなかったか。
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