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日本代表 12年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その4・南アW杯ベスト16とその先)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

遠藤よりも機能する選手は他にもいた筈だ

 MFでは阿部が守備面で八面六臂の活躍だった。しかし、長谷部と遠藤に関しては持ち味を発揮したとはいえない。ともに豊富な運動量で貢献したが、本来はもっと攻撃力のある選手だ。とくに遠藤はガンバ大阪での遠藤とは違う選手のようだった。主に守備だけを考えて編成されたチームの中で、遠藤より機能する選手はほかにいたと思う。

 だが、遠藤を外してしまうとセットプレーの威力がなくなってしまう。FK、CKが頼みの綱である以上、遠藤は外せなかった。デンマーク戦では素晴らしいFKを直接たたき込み、正確なキックでチャンスを作り、ときおりパスワークの中心にもなっていたが、遠藤の本来の能力からすればW杯は半分ぐらいだったのではないか。

 松井、大久保の両サイドは守備面の貢献とドリブルでの持ち上がりで特徴を発揮した。1トップに抜擢された本田は微妙なところで、彼も遠藤ほどではないが能力を発揮したとはいいがたい。デンマーク戦での遠藤の得点場面(FK)における心理的な関与(デンマークは本田が蹴ると思っていた)も含めると、本田は日本の全得点に貢献した。また、前線でロングボールを収めて攻撃の起点にもなった。

 だが、彼の本来のポジションはトップ下だ。前を向いて仕掛け、とくにミドルレンジからのシュートが大きな武器である。しかし、1トップとしてほとんど相手を背負っている状態では得意のミドルは打てない。本田も遠藤もチームへの貢献度は高かったかもしれないが、ある意味、チームのために犠牲になった選手だと思う。

 持ち味を発揮できなかったのは遠藤、長谷部、本田の3人だけではない。デンマーク戦で1点を入れた岡崎も“らしさ”を発揮できなかった1人だ。森本貴幸に至っては出場チャンスすらなかった。岡崎と森本は相手ゴール前が仕事場である。ところが、W杯の日本は相手ゴール前に安定的にボールを運ぶことができなかった。

 ゴール前でシュートを決める能力の高いFWよりも、守備に貢献して攻撃時にはボールを運んで行ってくれるFWが必要だった。あの戦法では森本がプレーする余地はない。運動量のある岡崎は守備面での貢献ができるが、ボールを運ぶという点では大久保や松井のほうが上である。

 中村俊輔、中村憲剛もボールを持たないサッカーでは、あまり働きどころがない。玉田圭司はあの戦法に合わない選手ではないが、出場機会は少なかった。

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