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日本代表 12年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その4・南アW杯ベスト16とその先)

オシム、岡田武史が目指した日本人らしいサッカーの先に何が見えたのか? そもそも日本人らしいサッカーとは何なのか? 今改めて問いたい。我々はどんなサッカーを求め、何を目指すのか、と。

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

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「日本人らしい」サッカーでW杯ベスト16の結果を得た

 オシム監督のチームを発展させるのに、岡田監督は向いていなかった。相手ゴール前までボールを運べるようになったチームが、その先の、どうやって得点をあげるかという課題を解決するための助けにはならなかった。

 断片的なアイデアを提示してしまったことでアイデアを伸ばす芽を摘み、個のアイデアに依存しすぎたために個を失った時点で手詰まりになった。簡単にいうと、小さくまとめすぎたのではないか。断片にフォーカスしすぎて全体を硬直化させたのではないかと思う。

 しかし、W杯緒戦の3週間前に方針転換してからベスト16の結果をたたき出したのは、岡田監督の本領発揮だった。Jリーグの監督としても、一定期間掲げた理想を諦めて開き直ったときに力を発揮してきた。土壇場で力を発揮したのは岡田監督だけでなく、チームについてもいえることだったと思う。

 南アフリカでの日本代表は、それまで描いていた「日本人らしい」サッカーではなかったかもしれないが、確かに「日本人らしい」プレーでグループリーグ突破を果たしたのだ。

 W杯の3週間前、韓国戦で敗れた後に日本代表はプレースタイルを変更した。

 岡田監督は「そんなに変えたつもりはない」と語っているが、自分たちがボールを持ってプレーするサッカーから、相手にボールを持たせてプレーするサッカーに変わったのは非常に大きな変化である。チーム作りの発想は全く反対になるからだ。

 GKが楢崎正剛から川島永嗣に代わり、MF中村俊輔が外れて阿部勇樹が入った。とくに中村OUT、阿部INは大きな変化だった。フォーメーションは4-2-3-1から4-1-4-1に変わった。

 闘莉王は、「俺たちはヘタなんだから泥臭く戦わなければいけない」と選手ミーティングで主張したといわれているが、韓国に敗れた時点で、選手たちもこのままではW杯ではやられると実感したに違いない。ボールを持ってどう攻めるかではなく、どうやって守るかが課題になった。やりたいことではなく、やらなければならないことをしなければならなかった。

 イングランド、コートジボワールとの強化試合に連敗したが、日本の守備戦術は機能しはじめていた。そして本田圭佑の1トップ、松井大輔の右サイドが確定したW杯緒戦のカメルーン戦で勝利し、南アフリカのチームは骨格が定まった。GK川島、DF駒野、中澤、闘莉王、長友、MF松井、長谷部、阿部、遠藤、大久保、FW本田。この先発メンバーは全試合で同じだった。

 日本の戦術は自陣にゾーンの網を張って守り、カウンターで得点を狙う。カウンターもファウルを誘ってセットプレーを獲得し、得意のFKからゴールを狙うというもの。

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