サイドからの崩しが増えたドルトムント
とは言うものの、それを補って余りあるほどチームとして成熟しているのが今のドルトムントだ。前線からの積極的なプレッシングからの鋭いカウンター、ボランチやサイドバックも絡んでの連動性の高い攻撃にはレアル・マドリーでさえ苦戦した。ユルゲン・クロップが監督に就任して5年目となるが、完成度は高まっている。
特にポジションにとらわれない、2列目の流動的な動きは昨季よりも精度が上がっている。それを可能にしているのが、今季ケガなく出場し、チームの中心となったゲッツェと新加入のロイスだ。
昨季の攻撃の中心は言うまでもなく香川真司。彼の特徴を最大限に活かすために、中央からの突破が多かった。さらに、ゲッツェが万全の状態ではなかったため、グロスクロイツが主に出場していた。グロスクロイツは横よりも縦への推進力が強い選手。チームとして攻撃の意識が中へ向くことが多かった。
今季加入のロイスは狭いスペースでの動きは香川に劣るが、サイドへのフリーラン、そしてそのスペースを使う動きに長けている。ブワシュチコフスキと頻繁にポジションチェンジをし、マークの的を絞らせていない。
そこに1トップのレバンドフスキも絡む。今季はトップ下の位置まで下がり、開いたスペースに2列目の選手が走り込ませるよう、動きの質が上がった印象だ。香川という主力を失っても、チーム力は落ちていない。
何より称賛されるべきはクロップの手腕だ。昨季、あれだけ質の高いサッカーをしていればそこに固執しても不思議ではない。しかし、クロップはロイスという新たな選手に香川と同じ動きを求めるのではなく、ロイスの特徴を活かした上でチームの完成度を高めた。若き指揮官が柔軟性を持ち合わせていることで、結果も出ているのだろう。
香川が抜け、ドルトムントのサッカーがどう変わったのか。そこに注目しても面白いだろう。
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