監督が長谷部をサイドバックで起用する意図とは?
前述した通り、フェアプレーの精神からすれば手放しに褒められる行為ではない。しかし、ここで長谷部がファウルしていなければ、前を向いたペクハルトが残されたセンターバックのケアと有利な状態で1対1になっていたか、左サイドをフリーで走るピノラにボールが出るか、いずれにしても極めて危険な状態になっていた。
ニュルンベルクはペナルティエリアの左手前でFKのチャンスを得たが、清武が右足でゴール前に入れたボールを守護神ベナーリオがパンチングでクリア。長谷部の“プロフェッショナル・ファウル”によってボルフスブルクは逆転の危機を切り抜けたのだ。
本職ではない右サイドバックを務め、フル出場を果たした長谷部。攻撃に絡む機会は少なく、後半32分にタイミング良く右サイドを上がり、オリッチにパスした場面も、フィニシュが相手のブロックに阻まれ勝ち越しゴールのアシストとはならなかった。
試合を通してみれば“地味な役回り”と言えるが、ブラジル人のジエゴをトップ下に置くダイヤモンド型の[4-4-2]において、サイドバックのバランサーとしての仕事は非常に重要な意味を持つ。
戦術家として知られるヘッキング監督が、サイド攻撃を得意とする相手に対して、専門職のファグネルではなく長谷部を起用するのは彼の持つバランス感覚とハードワーク、そして咄嗟の対応力を買ってのものだろう。
本来ならばそうした資質を日本代表と同じボランチで活かしたいものだが、与えられたポジションで奮闘する長谷部らしさはこの試合でも出ていたことは確かだ。
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