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日本代表 12年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その3・岡田監督の試みと挫折)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

中村俊輔と遠藤がいなければ崩れてしまうチームだった

 この後、岡田監督は中心選手の中村俊輔をスタメンから外し、プレースタイルを変え、W杯でベスト16を勝ち取った。まだ記憶に新しいW杯のチームについて言及する前に、なぜ岡田監督が当初目指した「日本化」が失敗に終わったのか考えてみたい。

 直接的な原因は、主力の中村俊輔、遠藤の不調である。パスワークの中心だった2人の不調によって日本のパスワークにヒビが入り、日本の戦い方の土台が失われてしまった。カメルーン戦まで3週間の時期まで引っ張ったわけだだが、これ以上待っても中村俊輔、遠藤がどれだけ回復するかの保証がない。そこで、岡田監督は就任以来続けてきた戦い方に見切りをつけた。

 逆に言えば、中村俊輔と遠藤がいなければ崩れてしまうチームだったということになる。どんなチームでも、中心選手を欠けばベストの状態を維持するのは難しい。しかし、あそこまで極端な崩れ方をするのも珍しい。

 例えば、ドイツは大黒柱のミヒャエル・バラックを負傷で欠いていたが、サミ・ケディラが穴を埋めた。ドイツの戦法はバラックを欠いても、さして影響を受けていない。マイケル・エッシェンを欠いたガーナも同様である。絶対的な中心選手を欠いても、チームの戦術が根本的に変わることはなかった。

 日本の場合は中村俊輔、遠藤の2人だった影響はあるかもしれないが、あまりにも2人への依存度が大きかったのではないか。遠藤はバルセロナでいう「4番」の役割を担っていた。DFからボールを預かって攻撃の起点となる司令塔の役どころである。ここが安定しなければ、日本のポゼッションは安定しない。

 中村俊輔の機能性はもう少し特殊だ。中村俊輔は右サイドのウイングポジションから引いてボールを受ける。遠藤を経由するか、DFから直接パスを受けるか、いずれにしても位置としてはディフェンスの前まで戻ってしまう。中村俊輔が下がると、入れ替わりにサイドバックの内田が上がる。相手の左サイドバックが中村俊輔に釣られて出てくれば、内田が右のスペースをつく。

 相手の左サイドバックが中村俊輔を追ってこなければ、中村俊輔はフリーになって前向きにプレーできる。相手のMFがマークした場合は、長谷部や遠藤が空く可能性が高いので、シンプルにそこへボールをはたけばいい。左足のコントロール、キープ力、長短のパスの正確さとアイデアを持つ中村俊輔は攻撃の起動装置であり切り札だった。

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