翻訳・構成:田村修一
心が締めつけられた代表デビュー戦
――今日はバルセロナよりも主にスペイン代表の話を伺います。国際試合で試合前に国歌を聞くときには、どんな気持ちになりますか?
「いつも特別な瞬間だ。感情がいっぱいに湧きあがって、それをどうにか押さえつける。慣れているとはいえ、内面では常に何かが起こっている。何度聞いても同じ喜びを感じるし、自分が国を代表していることが実感できて、とても誇らしい気持ちになるね」
――つまり感動しているわけですね。自分では歌わなくとも心に響きますか?(編注:スペイン国歌は歌詞がない)
「最高の瞬間だよ。すでに試合に集中して、ピッチの上のことだけを考えていても、そのときだけは違う感情が湧き起ってくる。まあ、そうは言っても、最初に聞いたときほどの感動は、今はないかも知れないけど。というのも僕が初めて代表に選ばれた試合は、生まれ故郷のアルバセテで行われたんだ。相手はロシアで、スタンドには家族や友人たちが見に来ていた。国歌がスタジアムに鳴り響いたときは、心が締めつけられるようだったよ。だから偶然ではあったけど、僕にとっては二重の意味で忘れられない思い出になったんだ」
――観衆やスタジアムの雰囲気はどうでしたか。冷静に眺めることができましたか?
「目が行かなかったわけじゃない。スタンドの様子も眺めたけど、落ち着いては見渡せなかった。それでも嬉しかったよ。自分を支え、勇気づけてくれるサポーターの前でプレーする方がいいに決まっているからね。誰だってそうだろう。でも敵意に満ちたアウェイのサポーターに囲まれたときも、跳ね返してやろうという強いモチベーションが生まれるよ」
――代表のユニフォームに身を包むのは、サッカーと祖国への愛があるからですか?
「もちろんさ」
――ならば代表で活動しているとき、選手の間でカタルーニャやバスクで起こっていることが話題になりますか?
「いや、そういう話はしないな」
――無関心なのでしょうか?
「それぞれが他人の意見――自分とは異なる意見も尊重しながら、独自の考えを持っている。僕の場合はラ・マンチャで生まれ、カタルーニャで育った。今は僕を申し分なく支えてくれる人たちに囲まれながら、満ち足りて暮らしている」