タイトル:『やらなあかんことはやらなあかんのや! 日本人の魂ここにあり』
著者:上田亮三郎
(アートヴィレッジ・1600円+税)
採点:☆☆☆★
帯コピーには同じ関西出身の岡田武史。古参サッカー・ファンなら無名だった大商大を大学日本一に導いたことを知っている。あるいはまた、トータル6年間日本代表Bと学生選抜の監督をつとめたことも。教え子はサッカー界に並み居たりなのである。
大衆性を意識した表題とサブタイトルからは、関西大学サッカー界の重鎮ならではの自信と矜持が伺われる。しかし実はユニークな自叙伝兼指導書であることが、その表題によって分かりづらくなっている。
読み手はすぐに著者がクラマーの薫陶を受けて30年、40年と実践してきた世代の一人と気づく。と同時に何かしらの古くささも。「半殺し」という昨今のサッカー指導者の本からは聞かれない言葉が出てくることに違和感を持つ者もいるだろう。そればかりか、第2章「人を動かす戦略……コーチとして」の中では「ヤクザとの出会い」と題したコラムまで掲載している。
「アマチュアスポーツ指導の神髄」こそがこの破調の自叙伝の通奏低音なのだが、そんな風に少しも堅苦しくならないところが魅力でもある。
同じ章では「アホなことといえば、私は猿の惑星のお面を高価なのですが、よく買いました。歩いていて面をかぶって驚かす。『監督はめちゃめちゃしよる』と笑いが出るわけです。そうかと思えば、次の日はどついたり、蹴りを入れたり」
この人に惚れられる/惚れられないを読者に問う本である。ただ重鎮の人生観とサッカー論は存外論理的で、こけおどしの最新外来語などに頼らぬ知恵やコツのように語られている。ラストの夫人インタビューによる暴露的回想は著者の贖罪意識からか。66点。
(「ゴールキーパーに取られるシュートを打つな」など意外な名言多し)