参考になったブラジルのボランチ、ラミレスとパウリーニョ
それでも指揮官は、3日後のポーランド・ヴロツワフでのブラジル戦にも遠藤と長谷部を先発させた。この試合では、フランス戦では見られなかったプレーがあった。
前半32分。遠藤が香川に縦パスを出したところに長谷部が絡んでいき、香川からのパスをドリブルしてミドルシュートを放った場面だ。
「これが長谷部と遠藤の一番いい距離感。遠藤が出し手になって、それに長谷部が3枚目で絡んでいくという」
遠藤の縦パスと、長谷部の前に出て行くアクションを組み合わせたプレーは、相手が強豪国であればあるほど大事だと名波氏は説く。
「ザックジャパンは2列目に強力な選手が揃っていますよね。アジア相手だったら、ある程度は2列目の選手だけでも崩し切れてしまう。だけど、強豪国が相手になれば、そうはいかなくなる。なぜなら、2列目は相手にマークされやすいし、背負ってもらうことが多いから、そこでボールを持とうとしてもつぶされてしまう。ブラジル戦でも、本田も香川も相手に背を向けた状態でパスを受けることが多かったですよね。ああいうとき、前を向いた状態で仕掛けていくには、ボランチとか3列目以降の選手が無理をしないといけないところがある」
参考になるのは対戦国ブラジルのボランチ、ラミレスとパウリーニョだ。ボランチの位置からDFラインの背後に飛び出す、神出鬼没なプレーは日本のDF陣をパニックに陥れた。
明らかな誤審により“幻のゴール”になってしまったが、後半22分にネイマールが右サイドのライン際から中に折り返したボールに詰めていたのは、ボランチの位置から何十メートルも上がってきたラミレスだった。
とはいえ、相手が強くなればなるほど、ボランチは守備に追われる時間が長くなる。ディフェンスで一杯一杯になる中で、前に出て行く回数を増やせというのは、酷なのではないだろうか――。そう聞くと、名波氏は日本なりのやり方を提案した。
「だから、ブラジルのボランチのように1試合の中でバンバン出て行くことはない。それは体力的にも難しいでしょう。90分の中で4、5回かな、お互いが2回ぐらい出て行くことをイメージしながら、ここぞというところだけ出て行けばいい」
強豪国からゴールをこじ開けるためには、ボランチが後ろで待っているだけではいけない。ボランチの前線への飛び出しは、ザックジャパンがアジア仕様から世界仕様に変わるためのカギになるかもしれない。