剛性と柔性の両立説明不可能なバロテッリ
今回、吉澤氏にはさまざまな選手の分析を聞いてみたが、その中で最も興奮気味に語ってくれたのがバロテッリだった。
「彼は今まで見た中で一番すごい。剛性と柔性を使い分けている。シュートを打つときは全身が剛性。ドリブルのときは下半身が剛性で、上半身が柔性。そうやって緩急を付けながらドリブルして、シュートはまた剛性になる。基本的に黒人選手は柔性が多くて、剛性はあまり見たことがないが…。バロテッリには説明できないすごみがある」
“説明できない”と語る吉澤氏は、分析者としてそれを恥じるどころか、むしろ嬉しそうだった。過去にさまざまな武道やスポーツの動きを分析してきた吉澤氏だったが、今回依頼した『サッカー』は相当に興味をそそる対象だったようだ。
「僕がサッカーを観ると、選手1人ひとりが特性を持った武器のように見える。その特性をチーム戦術にどう組み合わせるか。他のスポーツはだいたい個人技や個人戦術がメインになるが、サッカーはチーム戦術や個性の組み合わせが占める割合が大きくて非常に興味深い。手を使わないというのはすごいルールだ。選手の体のリズムが、プレーにそのまま表れる。よくこんなスポーツを発明したなと思うよ」
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初出:欧州サッカー批評6