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日本代表 12年前

【名波浩が徹底分析】何故、遠藤と長谷部は不動の存在なのか?(前編)

text by 北健一郎 photo by Kenzaburo Matsuoka

「司令塔」の遠藤と「補佐官」の長谷部


長谷部誠【写真:松岡健三郎】

 遠藤を「司令塔」とするなら、長谷部は優秀な「補佐官」のような感じだ。遠藤がボールを持ったとき、長谷部は角度をつけてサポートする。サッカーではボールを持った選手に対してサポートにつくのは当たり前のプレーだが、長谷部の場合は後ろで受けるのではなく、前で受けようとする意識が高い。

 それにより、遠藤からのパスを高い位置で受けてボールを運んでいくことができる。どうしても、決定的なパスを繰り出す遠藤にスポットライトが当たりがちだが、遠藤が司令塔としてパスをさばけるのも、長谷部のサポートあってこそなのだ。

 次に名波氏が挙げたのが、守備面でのバランス感覚の良さだった。アジア予選のように実力的に落ちる相手との試合では、必然的に日本がボールを持つ時間が長くなる。日本戦では多くのチームが引いて守りを固めてくるため、そうした相手を崩すには、攻撃に人数をかけなければならない。

 例えば、左MFの香川真司が中に入って、左サイドバックの長友佑都が上がっていけば、自陣の左サイドはがら空きになる。ボールを奪われて、左サイドのスペースを突かれれば、一気にゴール前まで運ばれてしまう。これまでも日本は何度も「守ってカウンター」というタイプのチームに苦しめられてきた。

 しかし、ザックジャパンではそのようなシーンはあまり見られない。その要因は遠藤と長谷部がマイボール時も、常にボールを奪われた後のことを頭に入れたポジションをとっているからだ。

「ボールを奪われたときは、ボランチ同士が前後関係になります。ボールサイドにいるボランチが前に出て、そうではないサイドのボランチが下がる。ここのバランスがいい。個で奪いに行くんじゃなくて、奪われたところから、最初にボールに近い選手にプレッシャーに行かせて、その間にパスコースを限定して狙いどころを明確にする。アジア予選に関しては自分たちのイメージ通りの守備ができていたんじゃないかと思います」

 アジア予選で日本がカウンターからピンチを招く場面が少なかったのは、ボランチのコンビが「攻めながら守る」ことができていたからだ。相手の守備の穴を探りつつも、もう一方では自分たちの守備にできた穴を埋めるために、細かなポジションの修正を行う。

 攻守両面のバランス感覚こそが、遠藤&長谷部コンビの最大の武器だろう。

【後編に続く】

初出:サッカー批評issue59

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