【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue59】掲載
日本史上最高のボランチコンビ
ザックジャパンのボランチは、2010年10月のチーム発足以降ずっと“無風地帯”だった。
軽快にパスをさばきながら、時に鋭い縦パスを入れて攻撃のスイッチを入れる遠藤保仁と、気の利いたサポートと、ダイナミックな上下動でチームを活性化させる長谷部誠。岡田ジャパンから引き継がれたユニットは、ザックジャパンにおいてもチームの骨格となっている。「遠藤と長谷部の戦術眼はワールドクラスだ」(ザッケローニ監督)
ポルトガル語で「舵取り」を意味するポジション名にふさわしく、時間帯や、試合の流れ、相手との力関係などを見極めて、最適な判断を下す様は、まさに“ピッチ上の監督”だ。2人のクレバーなプレーは、ザックジャパンにとってなくてはならないものだ。
「バランス感覚の良さが一番のポイントだと思います」
そう語るのは、元日本代表の名波浩氏だ。日本代表では主にボランチとしてプレーした名波氏の目から見ても、遠藤と長谷部のユニットは「過去にダブルボランチを組んでいたどのコンビよりもバランスがいい」という。
「主に配球に入っている遠藤と、その配球のためにいい立ち位置を取って周りを活かす長谷部。どちらかと言えば、遠藤のほうがボールに触る回数も多いし、攻撃的な印象なんだけど、ポジション的には遠藤がちょっと後方に構えている。長谷部は斜に構えるというか、ナナメにアングルをとって、常に前へのサポートや、ボールを奪われた後のケアを考えている感じですかね」
ザックジャパンの司令塔となるのが遠藤だ。遠藤の長所は、パスをさばくだけでなく、縦パスで攻撃のスイッチを入れられるところ。香川真司のハーフターンからの抜け出し、本田圭佑のポストプレー、岡崎慎司の裏への飛び出し……。遠藤のパスなくして、日本の攻撃は始まらないといっても過言ではない。
「遠藤はボールをさばくことはもちろん、スイッチを入れるのが本当にうまい。3~5メートルぐらいの、何でもないように見えるパスなんだけど、やっぱりタイミングが他の人と違うかなと。味方が欲しいときにパスを出してくれるから、受ける側としてはストレスがない。自分のタイミングじゃなくて、味方のタイミングに合わせてあげる、“優しいパス”ですね。だから、ツータッチ以下のプレーが多い。長谷部も徐々に感化されて、タッチ数も減ってきていると思う」