「現状では完成度は半分くらい」と語る美濃部監督
試合前に降っていた雨は開始直後には止んだものの、この季節特有のボールが流されるほどの強風がピッチ上の選手たちを惑わせる。風下の長野は相模原のカウンター攻撃に押され気味で、監督肝入りの4-3-3も明らかに発展途上といったところ。
ただ、そのなかで左のシャドーに入った背番号17、松尾昇吾の活躍は出色で、積極的なドリブル突破で度々左サイドから起点を作り、相模原ディフェンスを混乱に陥れていた。活動休止したアルテ高崎から移籍した昨季は21試合出場に留まったものの、試合後には「このポジションは面白い。もっとゴールに関わらないと」と意欲十分で、今季は飛躍のシーズンとなることを予感させた。
エンドが替わった後半にようやくリズムを取り戻した長野は、風の勢いも借りて相模原ゴールに襲いかかるが、フィニッシュの精度とゴール前でのアイディアに欠け、相模原GK佐藤健のビッグセーブもあり得点には至らない。頼みの宇野沢も本人が「自分にマークが集中していた」と振り返るように、徹底したケアの前にシュート機会すら封じられてしまう。
場内にこのままスコアレスドローかという雰囲気すら漂い始めた後半アディショナルタイム、美濃部監督は松尾に替えて佐藤悠希を投入する。この交代策が大成功。その1分後の90分+4分、ゴール前での混戦から宇野沢が繋いだボールを佐藤が右足で押し込む。投入直後のワンプレーで値千金の決勝弾を生んだ。
結果は劇的なものでサポーターも溜飲を下げたが、内容は手放しで喜べるものではなかった。しかし美濃部監督自ら「現状の完成度は半分くらい」と口にするように、新体制になってから初の公式戦。今は産みの苦しみの途中といったところだろう。この先は日々のトレーニングはもちろん、公式戦を通じてコンビネーションの向上や戦術面での完成度を高めないといけない。
幸い、今季から京都・徳島で美濃部サッカーの体現者として活躍してきた平島崇が加入している。長野1年目ながらチーム最年長でもあり、「全力でプレーする姿を見せて、チームを引っ張っていきたい」と強い決意を覗かせる。その存在はこの先の大きなポイントになりそうだ。
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記事提供:サッカーを読む!Jマガ