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ジュニサカ 12年前

サッカーの現場に体罰はあるのか?『小澤一郎の育成指導をさぐる旅』

text by 小澤一郎 photo by editorial staff

難しいことは難しいと認めて発言していくことが重要

 私はスペインの指導現場に立って、その厳しい上下関係も暴力指導も何十キロという罰走はおろか素走りも少なく、練習も普通に週3、4日で1回90分のスペインが世界一になったことに、はっと気付かされた。結局のところ。日本のやり方、考え方が根本的に違うのではないだろうか?

 目先の結果を見るならば、ローカルな日本の大会ではなく、世界の大会や世界の先進国に目を向けようではないか。それがサッカーというスポーツの持つ魅力であり本質だ。

 その意味でも、社会的にこうした状況になった今、改めて新座片山FCの取材をしてみたいし、体罰動画で問題となった大阪の街クラブにも足を運んで話を聞きたい。そうしたクラブというのは周知の通り、評判は良くないし、表面上の取材だけ見えてこない問題と同時に取材の限界があることを理解している。ただし、私自身がそうしたクラブや指導者を取材する目的は、彼らの考えと現状を知るためであって、水戸黄門気取りで「悪を成敗しよう」などと考えることはない。

 JFAがよく口にするリスペクトとプレーヤーズファーストの視点を持って、難しい問題だからこそ様々な人、クラブ、視点からアプローチしていきたい。真のプレーヤーズファーストとは、「選手が主役」の環境を作るため、周りの大人が「いかに邪魔をしないか」を考えることではないか。その意味で、今回のJFA発信の指針や提案は、まだまだ大人目線であり、指導者が主役となりたがっている印象も受ける。

 また、私自身は指導者やクラブ単体の問題のみならず、大会制度や育成システムの構造的問題に多くの問題が起因しているという認識を持っている。もちろん、そうなった時には単に「暴力根絶」を目指すだけではない別の角度からの旅も必要になってくるだろう。

 特に、4種というカテゴリーについては指導現場以外のオフ・ザ・ピッチに根深い問題が数多く転がっている。そうした問題一つひとつに真摯に向き合い、難しいことは「難しい」と認めて発言していくことが重要なことではないか。その上で、今ある問題や改善のための具体策が明らかになるようなら、それこそがこの旅を始めた最大の意義となるに違いない。そうした信念を持って次なる旅の目的と行き先を探すことにしたい。

【日本サッカー協会が示した、サッカーの指導現場における暴力根絶に向けての指針/骨子(案)】

注)正式決定ではなく、この方針をベースに今後関係部署、各都道府県サッカー協会などと議論を深めながら、さらに詳細を詰めていく予定

1.登録指導者に対し、サッカーの育成現場において、今後一切の暴力を根絶するという意志の確認

2.サッカーの指導現場の環境改善
 ①指導者の指導力アップ
 ②指導を受ける環境の改善
 a)登録チームすべての指導現場においてライセンス指導者配置の義務化検討
 b)登録チームすべての指導現場において適正人数による指導の義務化検討

3.指導者登録規定の確認
→公認指導者として「ふさわしくない行為」があったと認められたときの資格失効

4.その他
 ①ライセンス指導者以外の一般に向けたメッセージ発信(リスペクトキャンペーンの活用)
 ②暴力根絶に向けたキャンペーンの実施検討
 ③Child Protecion Policy 導入の検討
 ④対応セクション/部会設置の検討

【了】

初出:ジュニアサッカーを応援しようvol.28

小澤一郎氏の第1回目の旅 げんこつ指導で有名な新座片山FCの記事はこちら

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