指導者登録規定の表記は変更しない形に
現状では、4種の全登録チームにD級以上の指導者の配置が義務化されているが、JFAは3年後の2016年を目処に1種、2種、3種にも義務化を広げていく考えを示した。さらに、「選手25人に1人のライセンス指導者」という数値目標を示し、「選手数に適した指導者を確保するという狙いに向けて、今後5年間で全指導者にライセンスの取得をしてもらいたい」と、各都道府県サッカー協会に対して理解を求めた。
ただ、全指導者のライセンス取得は現実的に難しい問題もあるため、眞藤部会長からはライセンスの新設についての言及がなされた。具体的には、2、3時間ほどのEランニング形式で取得できるライセンスで、「機能が整い次第、2013年度中に実施していきたい」という内容だった。
3つ目の取り組みとしては、指導者登録規定の確認。JFA公認指導者登録制度には、「13.資格の失効」という項目があり、「(1)公認指導者としてふさわしくない行為があったと認められたとき」という表記がある。指導現場における暴力が社会問題化する中、JFAとして「ふさわしくない行為」がどのようなものか考えてきたというが、「あらゆるケースを考慮しましたが、解釈の限定や拡大につながる恐れがあるため、現行規定のままにしました。これまで通りの規定で取り組んでいきます」(眞藤部会長)という現行ルールの確認が行われた。
最後の4つ目は、ライセンス指導者以外の一般向けの発信。眞藤部会長からは、「体罰を寛容に受け止める精神風土を排除していくため、その理解を深めるために、様々なツールを開発して社会に発信していきます」という概要説明に続き、ロゴやポスターなどを作成し、啓発していくリスペクトキャンペーンの活用と海外で導入されている『チャイルド・プロテクション・ポリシー』(子どもの安全確保指針)の導入検討が示された。
また、こうした暴力問題を専門に扱う対応セクションや部会設置の検討についても言及があり、最後に眞藤部会長からは「サッカー界で一致団結して暴力根絶へ向けて動いていきたい」という決意表明があった。
いまだ日本社会全体が体罰、暴力問題に揺れる中で、暴力根絶に向けて力強い宣言と具体的な取り組み案を発信した今回のJFAの姿勢は評価されるべきだろう。取材時、山口技術委員長は「我々がアクションを起こすことは他の競技にも影響を及ぼしますし、風土を変えるスタートになることを期待しています」と発言したように、JFAがいち早くこの問題に取り組んだことは、スポーツ界のみならず社会的に大きな一歩であり、我々サッカーメディアもJFAの取り組みを積極的に発信、支援していくべきだ。
もちろん、今回のJFAの取り組みはあくまで指針の案であるため、まだ手放しで評価できる項目がないのは事実だが、取り組みのひとつ目にあるようにJFAが約6万7千人いるライセンス取得者全員に対して暴力根絶の意思確認を行うような具体的なアクションは、これまで長期間にわたってサッカー界でも放置されてきた指導現場での暴力根絶への歩みを加速させてくれるに違いない。