広島市特有の問題点
この市の計画には被爆地である広島特有の問題が絡んでいる。
――現状の問題点は?
「旧市民球場跡地にスタジアムを作るにはコンセンサスが必要です。市民のニーズは高くても、広島は被爆地という歴史を背負っている。旧市民球場跡地は、平和記念公園に隣接した場所にあります。昔、丹下健三さんという建築家が直線軸をベースに平和記念公園をデザインしました。
平和記念資料館から原爆ドーム資料館までの縦のストレートラインからすると、旧市民球場跡地は原爆ドーム資料館の背後にかかるわけですが、この直線軸には景観を守るために何も建てるべきではないという考え方がある。平和を強く訴える人たちは条件反射的に『平和軸(直線軸)の景観は守らないといけない』という人がとても多い。当時モダニズムを追求された丹下さんが現代にご存命ならば、そんなことは望まれないように思うのですが」
――当時の秋葉市長は、そういう人たちが支持母体であるがゆえか、その直線軸にかかる広島市民球場を、多くの反対を押し切って2008年に独断で移設したそうですね。そうして旧市民球場跡地を平和記念公園の拡充化、緑地公園化してイベント利用するという方向へ持っていこうとした。当然、周辺の商業施設関係者には不評ですが。
「民間の人たちは行政の人たちよりも敏感にアンテナを張っています。大きなイベントを呼ぶにはイニシャルもアイデアも必要。年間を通して開催することは不可能ですよ。確実に年間20試合は行うサッカーがあれば、最低限の安心と担保は買えます。年間20試合しかない箱物を持ってくるなという少数派の反発は存在しますが、少数派でも反対する人たちの熱量が高いことも確かですね」
――反対勢力をどう把握されていますか?
「私の肌感覚ですが、パーセンテージで言えば、平和公園に隣接することを訴える人たちが50%以上、スタジアムを箱物だと言う人たちが20%、他のアイデアを実現したい人たちが20%、移転を強いられたカープの聖地(旧市民球場跡地)には何も建てるなという野球関連が10%以下という感じでしょうか」