ビッグアーチの環境がリピーターの足を遠のかせる
――現在の活動の中心は、サッカー専用スタジアムの実現ということになるのでしょうか?
「それも大きいのですが、専用スタジアムの前に、まずサンフレのホームをビッグアーチから移設させたいということですね。ビッグアーチはこの5年で見ると年間維持費が4億5000万円。収入は使用料としてサンフレから6000万円強、あとはイベントや陸上競技などから年間合計で約1億6000万円。ですから毎年約3億円の赤字を出し続けている。
サンフレのホームを移設した場合、6000万円の収入が減るじゃないか、と指摘する人もいますが違うんです。サンフレがビッグアーチで試合を行うには芝生の養生が必要。そのために他のイベントや陸上競技で使用できずに全体の稼働率が上がらなかった。
サンフレがあるがゆえにビッグアーチも赤字を出しているとも言えるんです。一方で、昨年はミスターチルドレン、一昨年はエグザイルがビッグアーチでコンサートを開催して、各々で4000万円以上もの使用料が落ちている。ビッグアーチはもっと黒字を出せるし、私にはサンフレが移設したあともケアしないといけないという気持ちがあります」
――ビッグアーチの具体的な黒字化策というのは?
「あそこは屋内コートや立派なセンターコートも併せ、テニスコートが20面もある。中四国地域で見てもクオリティの高い施設があるから、さらに民間宿泊施設を作って、アマチュア競技もどんどん来られるようにキャンプ地化させたいんです。
それと、今はサンフレのクラブハウスや練習場が安芸高田市にあって、そこが広島市内から高速を使っても1時間。将来ACLの常連となれば過密日程で疲労したときに選手が事故を起こしかねない。安芸高田市は長年にわたりクラブをサポートして下さっているので調整は必要ですが、私は広島市内に比較的近いビッグアーチをマザータウン化させたいと考えています。試合のある年間20試合だけでなく、365日、世代を超えたスポーツタウン化です」
――まずは既存のビッグアーチを“潤わせる”という発想は興味深いですね。
「私にとってはそこが出発点なんです。安直に専用スタジアムを建てようと言っているわけではありません。ただ、もうビッグアーチは限界が来ている。今後はクラブライセンス制度の絡みもあります。耐用年数の問題も内包していれば、多額の赤字に加えて、試合開催時の周辺の交通量が異常に多くて周辺住民から苦情が出ています。
以前は周辺に2700台分の駐車場があったのに開発が進んで民間に土地が売却された。2007年や2008年くらいに柏木君、森脇君ら若い世代が頭角を現し、寿人君の活躍もあり、全国的にも知名度を上げて、天皇杯で準優勝して、ゼロックス杯を獲って、明らかにホームもアウェイもサポーターが増え始めたんです。でもインフラが間に合わなかった。当時は県外から来ても車を駐車することができず、そのまま帰ったお客さんがたくさんいました。一番リピーターを確保しなければいけない時期に一番お客さんを失ったんです」
平日のビッグアーチ周辺を散歩をしていた夫婦は「試合がある日に買い物から帰ってきて最寄のインターを降りると、普段なら自宅に10分で帰れるところを1時間もかかった」と話していた。「できるだけ新スタジアム建設の方向でお願いしますね」とも。