戦術面、選手の経験値、ともに差があった
次に戦術面。ミランは第一戦とまるっきり同じことをやってきた一方、バルセロナはそうではなかった。若干ダルな感のあったハイプレスは見違えるほど激しく、そして的確にビルドアップを掛けるミランの急所を突いた。
ミランは組織守備からボールを奪うと、一旦サイドバックへと回してピッチの幅を取り、そしてインサイドMFを経由してボールを縦に出し、サイドを破るというメカニズムを持っている。これをバルサは徹底して切断した。
ボールを奪われた後も前線は前に残り、アバーテ、コンスタンへプレッシャーを掛け、モントリーボやフラミニも素早く囲む。パスコースが断たれたミランは強引に繋ぐしかなく、不用意な中央突破や不正確な縦パスを仕掛けるようになる。2、3点目は全て、これらを奪われ、そこからの素早い展開から奪われたものだ。
そして、選手の経験値の差だ。GKとの1対1でシュートをバーに当てたニアンのみならず、エル・シャラウィもサイドから切り崩して何度かチャンスを作りかけてはいる。しかし、ゴール前での正確なプレイにはつながらなかった。「バルサ相手だと(相手のパスワークに)走らされる。それで疲れてしまう」とニアンは言う。
18歳とまだ若く、成長度を加味すれば同じことは起らないかもしれない。ただこの日の試合においては、十分にチャンスを活かせるほど狡猾ではなかった。後半も、ボージャン投入で思い切ってアタッカーを4枚にしてからは、有効にピッチの幅を使って相手を押し込むことは出来た。その時のフィニッシュワークが稚拙だったことも、また悔やまれる。
第1戦での祝勝ムードなどは、直ちに吹っ飛んだ。地元紙は「メッシから受けた教訓(ガゼッタ・デッロ・スポルト)」と脱帽し、TVのゲストコメンテーターを務めていた元イタリア代表FWパオロ・ロッシは「こんな素早いプレイは見たことがない」と驚愕していた。
ただガットゥーゾやネスタらが抜け求心力の低下が叫ばれる中、CLの上位常連だった数年前と遜色ない組織守備を見せ、8強進出へ希望を一度は開いたことは大きな収穫だろう。世代交代は単なるリストラではなく、若手を成長させ将来の希望へとつながった。今後、バルサと戦った第2戦のような試合で、必要とされる結果を確実にもぎ取ることができれば、その時ははじめて『強豪復活』と言えるだろう。
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