ミランの想定を超えていたメッシのプレー
ミランが2-0でバルセロナを制した第1戦、イタリア国内はすっかり祝勝ムードに湧いていた。「capolavoro」の文字があらゆる媒体で踊り、コリエレ・デッロ・スポルトは「火星人とはミランのことだった」と持ち上げた。
ガゼッタ・デッロ・スポルトなどは「805本パスを通しても、シュートを枠に通さなければ意味がない」などと、ここぞとばかりにバルサのポゼッションサッカー批判。『鬼の首を取る』とはまさにこのことだ。すっかり名将になっていたアレグリ監督は第2戦に向け「3点以上取られるようなら、その時は相手を褒めよう」と豪気に語っていた。
しかし結果は、バルサ4-0ミラン。両ウイングが守備に積極的に参加する4-3-3で組織を固めるシステムを始め、ミランは第1戦と同じアプローチながらもこの大差。主将のアンブロジーニは試合後「僕たちは彼らに対抗出来るレベルになかった」と憔悴した表情で話していた。
1ゴールでも入っていれば「別の試合について語っていたこともあり得た展開だった(アレグリ監督)」ことも事実だが、結果は結果である。一体、どういう点が両チームの差となって現れたのだろうか。
ミランはメッシを止められなかった【写真:山田一仁】
まずは技術面の差。第1戦では中盤に下がるメッシを組織守備で食い止めるメカニズムが機能していたが、これを本人の圧倒的な技量で超えられた。先制点を奪われた前線5分の守備は、ミランでは準備した通りの対応だったのだろう。前線からやや下がった位置に陣取るメッシに対し、CBは突っ込まず、MF陣で囲もうとする。
しかし中盤のプレスはショートパスでかわされる。密集の中をメッシは瞬時に前を向き、対峙したメクセスがシュートコースを切ろうと足を出した時には、ゴール左上隅を捉える正確で速い軌道のシュートが一瞬で放たれていた。彼が第1戦で単に不調だったのか、それとも第2戦で切り替えてきたのかは分からない。いずれにせよ確かのは、それがミランの守備陣の想定を超えていたということだ。