バルサを倒すのは“イタリア人監督”だ
――先ほどミスターはバルサの歴史を指して、『2度と繰り返し得ない』とおっしゃった。しかし現実には、ここイタリアでもバルサのサッカーに追随しようとする動きが少なくはありません。やはり、ミスターはこうした流れには反対の立場なのでしょうか。
「言えるのは、イタリアのバルサ化には非常に大きなリスクが伴うということ。イングランド代表監督(※当時)としての立場上、それ以上のことを言うのは控えることにしたい」
――では、他ならぬバルサからルイス・エンリケを監督として招聘したローマについてはどうでしょう。
「確かに彼はバルサ出身、しかし監督としての経験は浅い。したがって少なからず疑問視されているのだろうが、今季のローマに先ほど私が述べた“リスク”はないと見ている。私の右腕でもあるフランコ・バルディーニがテクニカル・ディレクターとして入る以上、彼らがチーム作りを誤ることはないと確信している」
――最後にこの質問です。バルセロナを倒すには……。
「バルセロナのようにプレーしてはならない。これが大前提であり鉄則だ。過去に多くのチームが、ビッグマッチまたはリーグ戦を落とす度に、“チームXはチームYと同じように戦おうとしたがために敗れた”と言われる場面を何度も目にしてきたわけだが、こと対バルサに関しては絶対に同様のプロセスを経てはならない。
バルサの歴史が繰り返し得ないと先に述べたが、ならばそのサッカーの質もまた同じだ。模倣し得ないレベルに彼らのクオリティはある。他すべてと次元が違う。したがってバルサに対し、バルサと同様のサッカーで挑むような真似は慎まなければならない。
バルサを倒すには、そのプレーの“源泉”を封じなければならない。ただし、言うまでもなくそのためには緻密な戦術プランが不可欠だ。したがって私は、いつかバルサを倒すチームが現れるとすれば、そのチームは他ならぬ“イタリア人監督”に率いられているものと半ば確信に近い思いを抱いている」
【了】
初出:欧州サッカー批評4