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【特集・3/11を忘れない】塩釜FC小幡忠義理事長インタビュー ~被災地救援を支えた塩釜FCの絆~(後編)

text by 木村元彦 photo by Tadayoshi Obata

頑張れねえやつはしょうがねえべ

 話をしていると小幡の携帯が鳴った。ひとりの高校生が相談があって来たいという。県サッカー協会会長はサシで向き合う。「辞めようかと悩んでいるんです」と語るその少年の悩みを全部聞いた後で、小幡は言った。「そうか、少し休め」そしてとうとうと自分の経験を語り始めた。

「俺も空手やっているときはその人間関係でな」「人は何で生きると思う?」じっくりと会話したあとで送り出し、「お前の悩みは分かった。またいつでも戻って来いよ。そしてお前が先輩になったら、お前みたいな悩みを後輩に持たせないようにするというのをやってみるのも意味があることだろ」。

 ふと、ああ50年間、いつもこうやって子どもたちと対話をしてきたのだなと思った。「皆、『がんばれ』『がんばれ東北』って言ってくれるけど、頑張れるやつだけ頑張れって、思うね。俺はいつも頑張れねえやつはしょうがねえべって言うんだから。そいつのペースでいいんだよ」(小幡)

 小幡が築きあげたのはトップダウンの帝国ではない。網の目のようなネットワークと信頼関係である。そこに大きな鍵が埋まっているように思う。

【了】

初出:サッカー批評issue51

プロフィール

小幡忠義(おばた・ただよし)
1940年宮城県塩竈市生まれ。塩釜FC理事長。東北学院大学では空手道部に所属。1964年、現在の塩釜FCの前身にあたる塩釜サッカースポーツ少年団を設立。1985年に塩釜FCが誕生すると、総合スポーツクラブを目指し、1994年には同クラブを社団法人化。ジュニアユース、ユースチーム、現在東北社会人サッカーリーグ1部に所属する塩釜FCヴィーゼに至るまでの一貫した指導体制を確立し、住吉勝、加藤久、鈴木武一、土橋正樹、守谷光信、平間智和、佐々木勇人(G大阪)、遠藤康(鹿島)など多くのJリーガーや指導者を育て上げる。宮城県サッカー協会会長、東北サッカー協会副会長も務める。

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