改善ポイントは外を使うことへの意識
初戦でのミランへの敗戦、そしてレアル・マドリーとの連敗で共通していたのが中央での交通渋滞だ。中央から崩す意識が強すぎるのか、味方が近い位置に集まりすぎてしまい、相手の脅威となるエリア付近では手薄になってしまっていた。
バルサはメッシが下がってボールを受けることが多い。従来であれば、メッシが下がったときにウイングの選手が中に入り、そしてウイングが移動して空いたスペースにはサイドバックが上がってくるなど、高い流動性を見せていた。
しかしミランとの初戦では、ウイングに入ったイニエスタが中へ絞ることが多く、加えてセスクも中央でボールを受けようとして、裏を狙う動きが少なかったためか、ミランはDFラインを一気に押し上げることができた。そうすると当然、ミランはプレスをかけやすくなる。チィキタカが分断され、シュートはわずか6本に抑えられた。
バルサがこの状況を改善するためには、多少出場メンバーをいじる必要がある。イニエスタを中盤へ下げ、ウイングにはビジャあるいはテージョを使う。もしくはメッシをウイングとして起用し、裏を意識させるためセスクをCFとして置く。
これまで、どんな強固な守備ブロックでもバルサは崩してきたが、それは中央からだけでなく多方面からの仕掛けがあったからだ。時に中から外へと一見ゴールから遠ざかるようなドリブルをして(イニエスタがよく見せていた)DFを釣り出し、空いたスペースに他の選手が次々と飛び出していく。
調子のいいときの動きを取り戻すためには中への意識を多少なりとも修正する必要がある。また、守備時の生命線であるフォアプレスも弱くなっている。グアルディオラやビラノバはこれらの問題点を試合中にも修正することができたが、果たしてロウラ代行監督にそれができるだろうか。
最近の試合を見ていると、中央突破に固執している印象を受ける。バルサらしいと言えばそうなのだが、まずは自分たちがベストパフォーマンスを発揮できるように戦術的柔軟性を取り戻すべきだろう。
もちろん、美学を貫き通しても結果を残すだけの力はバルサにはある。ここ数年、欧州の舞台でもっとも美しく、最も多くの勝利を手にしてきたチームなのだから。だが、ことミラン戦に限れば2点のビハインドがあり、過去に前例のない逆転をしなければならないのだ。
初戦と同じく中央だけに突破口を見出すのは、どうも“たったひとつの冴えたやりかた”であるような気がしてならない。
【了】