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バルサキラー、ファビオ・カペッロが語るFCバルセロナ攻略法。(前編)

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazuhito Yamada

今のバルサはクライフ指揮下のチームに比べて3、4倍速い

 だが、ひとつの大きな違いがあるとすれば、それはスピード。これが圧倒的に違う。今日のバルサはクライフ指揮下のチームに比べて3、4倍の速さをすべてにおいて備えている。パスの一つひとつ、選手の思考速度、滑らかなポゼッションから一転して縦に入る際の加速、エリア内における選手複数の動き、トラップからシュートを放つまでに要する時間……。すべてにおいて今日のバルサは圧倒的に速い。速いからこそ視界が増し、まさにシャビがそうであるように、パスの範囲が極めて広角になる。


バルサの中盤を司る、チャビとイニエスタ【写真:山田一仁】

 その上、おそらくは近々マラドーナの域に達するはずの、だが速さではディエゴを遥かに凌ぐレオネル・メッシが今日のバルサにはいる。とにかく、今日のバルサの強さの秘訣は言うまでもなく中盤。あの94年のバルサにもペップだけでなくバケーロもいたが、そして彼らもまた確かに優れたMFであり、シャビとイニエスタと資質は非常によく似ているんだが、しかし先ほども述べた通り、今日のシャビとイニエスタはペップとバケーロを速さで格段に上回っている。比較にならないと言えるだろう。

 まるで、それこそMade in Japanの半導体をその脳に組み込んでいるかのように(笑)。シャビとイニエスタの思考速度は恐ろしく速い。だけでなく、その脳から伝達された指令を狂いなく表現できる技を足下に備えている。ローマの監督だった02/03シーズンにグアルディオラを指揮下に置いた経験から、そう私には明言できる」

――とはいえ94年当時のバルサもまた強く、したがって件の決勝前にミランの勝ちを予想する者は皆無でした。にもかかわらずミランは4-0の圧勝。それはなぜ可能だったのでしょうか?

「勝ち点の積み重ねを競う長いリーグ戦とは違い、CL決勝とは言うまでもなく一発勝負。したがって策は無数にあり、単に技術面だけでなく様々な外的要因もまたそこに絡んでくる。これを総合的にどう処理するか。最も厳しく問われるのはその部分ということになる。そして、この処理を誤らなければ実力差を逆転させることも可能になる、と。

 その意味で、対クライフのバルサにおいては“精神面”のケアが何にも増して重要だった。彼らはその2年前にもCLを制し、チームとしての成熟度は限りなく高く、あのクライフ特有のフィロソフィーを余すことなく体現していた。したがって当然のごとく彼らは自信に満ち溢れていた。一方で、我々ミランの守備システムはこれ以上ないレベルにまで達していた。

 だが、その守りの要であるフランコ(・バレージ)とビリー(アレッサンドロ・コスタクルタ)を出場停止で欠いていたのだ。クライフがさらに自信を深めたのは当然だった。事実、クライフは試合の前日に公の場で『ミランに勝ち目は絶対にない』と言い切っていた。だけでなく、CLの賜杯と写真に収まるというパフォーマンスまでやってみせている。

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