いかにして打倒バルサを成し得たのか
――バルサ攻略法について、3度にもわたりバルサを倒しているミスターの見解をお尋ねしたい。まずは時系列的に、“いかにして打倒バルサを成し得たのか”を語っていただけますでしょうか。
「それは一向に構わないんだが、やはりまず私から述べておくべきと思うのは、あのバルサをCL決勝で倒した時代と今ではサッカーそのものに、また何よりもバルサ自体にも余りに大きな違いがあるということ。したがって君の言う攻略法なるものを考えようとしても、たとえばあの94年にミランが採った策をそのまま今に当てはめることは物理的にできないということになる。
とにかく、私が初めてバルサを倒したのは94年。偉大なるヨハン・クライフに率いられたバルサはまさに“ドリーム・チーム”であった。そして3年ののちに今度はレアルを率いて私はリーガを制したわけだが、正直なところ、当時のバルサはその戦力を著しく落としていた。したがって96/97シーズンを制することはさほど難しくなかったということになる。
だが、それから10年を経た2006年、フランク(・ライカールト)指揮下のバルサは違っていた。クライフ時代と同等、あるいはそれ以上の力を持つチームだったと言えるはずだ。事実、彼らはその前年(05/06シーズン)には3冠を成し遂げている。今日のバルサがそうであるように、時のバルサもまた美しさと強さを兼ね備えた実に素晴らしいチームだった」
――確かに過去との比較に意味を見出すのは難しいのかもしれませんが、分析の対象となるバルサは実に40年にもわたりその哲学を変えていないのですから、むしろ過去の検証なくして今日のバルサ対策を見出すのは不可能とも言えるはずです。ここではミスターの“対バルサ史”を一つひとつ振り返っていただきたい。まずは、“1994年、VSクライフのバルサ”から。
「偉大なるクライフはまさに独自の哲学に基づいて華麗なるチームを作り、今日のバルサと同様、その流れるようなパスワークを封じるのは至難の業だった。長短のパスを実にバランス良く織り交ぜたポゼッションは相手チームを疲弊させ、遂には敵を“眠らせてしまっていた”ほどだ。したがって彼らは守備組織、または守備のシステムなる概念を必要とさえしていなかった。ボールは常に彼らが支配していたからだ。まさに攻撃は最大の防御なり。この定理を現実のものとしていたわけだ。その中心は、他ならぬ現バルサ監督のグアルディオラであり、だからこそ今と当時のバルサに共通点は多い。