ハマトラの構成
ハマトラ立ち上げ当時のインタビューでこのように自分は答えている。
「サポーターというのは、自分たちの哲学の中では『消費者』ではないんですね。能動的にサッカーを中心とする文化にかかわっていく人たちが『サポーター』なんです。かつて、岡田武史さんは次のように語っていたことがあります。サポーターはチームとともに闘うなかで感動を得る、ファンはお金を払って感動を買う、と。自分たちがハマトラを通じてやってきたことは、まさにこのことです」
「チームとともに戦う方法はなんなのか? 目の前の試合を応援することもそうでしょう。しかし、それだけではなく、もっと何かあるのではないか。チケットやグッズを買って、それでチームに貢献するということもできると思いますが、それでカネ払っているからオレには権利がある、という論法は正しいのか? 少なくともそこに夢があるのか? Jリーグと日本のサッカー文化はそんな風にできているとはとても思えないですし、未来はそれでは描けないと思います」
「ハマトラには『サポーター』しかいません。サッカーファンの方には、それぞれのスタンスで、サッカーとヨコハマを楽しんでもらいたいと思っています。けれど、自分たちは違う。テレビを見て、スタジアムで試合を見て、それはそれでサッカー・カルチャーのひとつでしょう。しかし、ハマトラが目指しているのは、単にスタジアムの内外で騒いでいるだけ……それは自分もそうなんですが……と思われているような私たちが、まったく違う力をもっていると証明することです」(サッカー瞬刊誌サポティスタhttp://supportista.jp/ 「特集: ゴール裏発のNPO法人『ハマトラ』が誕生」より)
NPOハマトラは、3000人超の「ハマトラSNS」会員と200人超のこの法人の「社員」で構成されている。議決権をもつ社員数では神奈川県下最大ということである。この会員を中核にしたマリノスサポーターのネットワークにより、様々な活動が日々繰り広げられている。
ホームタウンである横浜市と横須賀市には、マリノスの試合告知用のポスターが4000箇所掲示されているが、これは年6回貼り替えられる。年間にすると、のべ2万4000枚が街中に貼り出されていることになる。
事情の知らない人に、マッチデイプログラムと間違えられるほどになった「フリーペーパーハマトラ」は、ハマトラの名前の由来になったサポーター企画の発行誌で、毎ホームゲームの発行を6年続けて、累計発行部数は30万部に達する。
これらの費用は全て寄付や会費の徴収をしない形で進められている。これはNPO法人としては珍しいパターンで、当初から事業型のNPOのスタイル、つまり非営利活動の資金は自分達の営利活動から捻出していくという収益構造を維持し続けている。なお、この収益のほとんどがアパレル売上である。
世界中のサポーターが、クラブのライツ管理の枠外でアパレルやグッズの販売を行っていることは、海外サッカーファンなら承知の事実だと思う。例えば、今年のヨコハマ・フットボール映画祭で招待作品としたインドネシア映画『ロミオとジュリエット?フリーガンの恋?』の主人公は、こうしたクラブの非オフィシャルなファングッズのショップ経営者であった(ちなみに、この主人公は敵対クラブのサポーターを恋人としたために裏切り者扱いされて、ショップの商品が全く売れなくなってしまうというエピソードまで、ご丁寧にも映画の中で出てくる)。