浦和が攻守で主導権を握った後半の時間帯
先制点を奪ってから、試合は完全に浦和のペースとなった。1トップに入った興梠の効果は絶大で、ボランチの阿部勇樹、鈴木啓太、そしてリベロの永田充から早いタイミングでどんどん縦パスが入っていく。そこでボールを失う確率が低くなったこと、ボールを出しやすいタイミングで興梠が顔を出してくれることなど複数の要因が重なり、縦にパスが入る頻度は昨シーズンと比較すると大幅に増えた。それに合わせて、試合のスピード感が劇的に高まった印象だ。
また、ディフェンス面でも浦和は全体的にブラッシュアップされている。リトリートして自陣で待ち構えるような昨シーズンの守り方から一歩進み、ボールを奪われて攻守転換したところでタイトにアプローチするようになった。浦和の積極的なアプローチに名古屋も上手く前線にボールを運ぶことができず、失点を喫してからは無理に縦へ入れて奪われる、という形が増えていった。
永田充が「縦パスを狙えっていう指示じゃないんですけど、とにかく球際を強めに行こうと監督の指示で言われている」と語るように、浦和は攻守両面でスピード感のある、タイトなプレーが明らかに増えた。
53分に宇賀神の得点が生まれてからは、ほとんどのルーズボールを拾い、厚みのある攻撃を何度も見せながら、圧倒的に相手を押し込んだ試合展開となった。それを考えれば、追加点を奪えなかったことは反省材料となるだろうが、5万を超えるサポーターが詰め掛けたホーム開幕戦でこれだけの内容を見せられたことは、何よりのアピールとなる。
【写真:松岡健三郎】
ペトロヴィッチ監督就任1年目の昨シーズンは、連携面の問題で縦パスが上手く入らず後方でボール回しが続くことも多く、守り方も含めて全体的にゆったりとした試合展開になることが多かった。それも一つのスタイルではあるが、熱気溢れる埼玉スタジアムの空気感とゲームのリズムが乖離していたことも事実だ。
しかし名古屋戦の後半、相手を押し込んで主導権を握り続けた時間帯は、ピッチ上で展開されるサッカーの内容と、スタジアムで繰り広げられる応援のリズム感が同期し、一体となって躍動する印象を与えた。この戦い方が継続されていけば、今年の浦和レッズはサポーターの圧倒的な声援をより味方に付けることができるだろう。
2006年、浦和がJリーグ制覇したときのホーム戦績は、15勝2分――。
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