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Jリーグ 12年前

優勝候補・柏に完勝したFC東京。昨季と何が違うのか?

text by 植田路生 photo by Kenzaburo Matsuoka

高橋秀人「今年はリトリートした守備ができる」

 昨季までのFC東京は、ボールを保持しながらも、崩し切れず、カウンターで一発をくらって敗れるということが少なからずあった。ポポヴィッチ監督も「集中力の欠如からの失点で試合を支配しながらも結果を得ることができない試合が何試合かあった」と語っている。試合によっては得点を奪うことよりも、ポゼッションすることが目的となってしまっていたことが課題だった。

 今季はポゼッションのスタイルは維持しながらも、攻撃の幅が広がった印象だ。ボールを回しつつも、相手の守備組織が崩れないと見るや、無理にポゼッションするのではなく、ボランチから縦への浮き球でチャンスを作ろうとしている。

 この試合でも、縦にクサビのパスを入れにくい状況になれば、渡邊が下がって相手DFを釣り出し、代わりにルーカスや東が中央へ走ってDFの裏を狙う。そこへ比較的長いボールを蹴り込む場面が何度か見られた。相手守備陣の混乱を招くという意味では十分効果的だった。

 渡邊の先制点もこの形から生まれている。米本が「監督からも奪った後のプレーを伸ばすように言われてきた。そうやって毎日、積み重ねてきたことが出た」と語っているように、ボールを奪った後、米本は渡邊の動きを確認するとすぐに縦へと送っている。

 また、守備面でも変化が見られる。「今年はリトリートした守備ができるようになってきた。ある程度は自由にやらすけど、ボールが入ったところでいくことができている」と高橋秀人が語っているように、フォアプレスだけでなく引いたときにもしっかりと守備ができていた。

 柏の攻撃のキーマンであるレアンドロ・ドミンゲスへボールが渡った際にはボランチの米本と高橋が必ずチェックにいっており、彼に前を向かせないようにしていた。クレオへのケアも怠っていない。下がってボールをもらおうとする動きには森重真人が付いて行き、サイドへ流れた際もSBもしくはルーカスまでもが下がって自由を与えないようにした。

 まだ2節を終えた段階だが、FC東京は攻守にバランスのとれたいい仕上がりを見せていると言っていいだろう。あとはこれを継続できるか。昨季までは順位が下のチームに取りこぼす悪癖があった。そこを解消することができれば、目標とする“優勝”が視野に入ってくるはずだ。

【了】

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