タイトル:『逆転力 マイナスをプラスにかえる力』
著者:丸山桂里奈
(宝島社・1300円+税)
採点:☆☆☆
「そのとき、なぜかボールからゴールに向かって金色のラインが見え、それに合わせて、私はとっさにダイレクトでシュートしたのです」
あの女子ワールドカップ準々決勝対ドイツ戦をジョーカーFWが詩的に振り返る。人生で一番長かったという1-0の後の12分間の記憶も思い出さずにはいられない。被災地映像をモチベーションにして闘った相手のアメリカ女子代表とは0勝21敗3分けだったことも綴られ、読み手は改めて昨夏の偉業を再認識する。
17年間のサッカーとの付き合いは、立地条件に恵まれないヴェルディの練習場に通い続けたことの大変さからもしのばれる。もっとも、100パーセントのサッカー漬けというわけにはいかないのが著者らしいところだ。中学時代の“道草”は、ゲームセンターにはまってしまった長友佑都のケースと似ている。ジャニーズJr.の追っかけをした時期もあったという。小学校卒業式のビデオでワールドカップでの豪快なゴールと優勝を語り現実となったあたりも、中3時点でプロ選手としてイタリアへ行く夢を綴った長友の歩みと共通する。
「逆転力」を充電中という時期での出版である。大けがからの逆転を果たした場合にはこの本の価値も急上昇するはずなのだが、コンセプトにとらわれ過ぎた各項ラストの「逆転の一言」は余計。自己啓発書の要素まで欲張るんですか、この本? と何度かノッキングを起こしてしまった。
それでもリトバルスキー・命! だった小学校時代にガニ股歩きをマネして自分までO脚になってしまった逸話や、日体大2年の代表初選出のときに「代表!?うわーいやだ?!」と反応したあたりはいかにも規格外の著者らしいところで好感が持てた。59点。
(桂里奈さんのお母さん、娘のミスパスをあまり批判しないであげてください)
【了】