補強面と総合力それぞれの診断結果
昨季の前半戦は首位で折り返しながら、後半に失速して10位。その最大の要因は守備の脆さ。懸念されていたセンターバックには浦和時代にアジア制覇に貢献したベテランの堀之内、対人に抜群の強さを誇る作田が大分から加入。十分に人材は揃ったといえるだろう。
船山、永田、ブランキーニョといった主力が抜けた中盤の穴には、キープ力の高さとゴール前への飛び出しを兼ね備える実力者、ロメロ・フランクを獲得。愛媛からレンタルバックした伊東とは青森山田時代の同級生という気心とプレースタイルを熟知する仲だ。ただし、その他のメンバーは高卒や大卒など未知数であり、マイナス分がやや上回る印象。フォワードの補強もなくインパクトがほしかったところではある。
それでも宮坂、秋葉、中島、山崎といった実力者たちは残留しており、奥野体制2年目は、個々が成長しながら戦術理解の精度をあげ、目指す攻撃的なスタイルへの転換を模索することになる。
昨季前半戦に首位通過したことが証明しているように、やはりJ1で揉まれた質の高い選手たちが揃っているという印象の山形。特に中盤の個々の質は高く、秋葉、宮坂、山崎、中島らが構成する今季も変わることはない。
宮坂は昨季がルーキーイヤーだったとは思えない堂々としたパフォーマンスで、特に直接FKから5得点と前半戦のチームを牽引したキープレーヤーだった。そこに加入したロメロ・フランクも水戸時代に攻撃の心臓的な存在だっただけに、山形にフィットすれば、目指す攻撃スタイルへの転換は順調に進むものと思われる。ブランキーニョ、船山、永田らが抜けた穴を感じさせることはないだろう。
昨季は後半戦に失速してからプレーオフ圏6位を上下し、最後まで突き抜けられなかった。その時期の不安材料だった守備を強化し、今季はどう出るかだが、目指すべき方向性をぶらす必要などまったくない。
昨季前半戦に見せていた、意図のあるパス回しと人の流動性に長けた攻撃スタイルは、山形の魅力的そのものだった。今季はその奥野スタイルをさらに追求してもらい、じっくりとJ1復帰を目指してほしいチームである。(※それぞれA~Eランクで診断)
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