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【秋春制を考える】原博実技術委員長に聞く日本サッカーの強化ビジョン(前編)

text by 西部謙司 photo by editorial staff

アジアカップがあるのに、天皇杯決勝を動かせなかった

――天皇杯を前倒しするんですか?

「そういう意見もあります。また、天皇杯だけでなくてシーズン全体を見直すという考えもある。で、いろいろな意見がある中で、結局は動かない。動かないまんまで、ここまで来ている。今年も1月にアジアカップがあるとわかっていたのに、1月1日の天皇杯決勝を動かせなかった。勝ち残っているクラブからは、選手を代表に招集しないでほしいという要望も出てきた」

――なぜアジアカップがあるのに天皇杯を動かせなかったんですか?

「天皇杯はNHKとの共催で、協会だけでは決められない。また、元旦決勝という歴史、日本サッカーの暗黒時代でも天皇杯決勝だけはお客さんが入ったりとか、これまでのいろいろな経緯があるということです」

――だいぶ前から、わかってたことですよね。

「2年前ですか、僕が技術委員長になってすぐにこれはどうにかしないといけないとは思いました。それで何度となく話し合う機会をもちましたが……」

――簡単には変えられない。

「変えられないんです。都道府県予選も含めて調整しないと、最後のところも動かせない。けっこう大きな力が必要だと。シーズン全体から変えたいという意見があり、いやそうじゃないという考えもあり、そうこうしているうちに動かない。現状、先送りになっています。で、このままいくと2015年のオーストラリア(アジアカップ)で同じことが起こるんですよ」

――今年のアジアカップ前の合宿でも人が集まらなかった。ぶっつけ本番ですよね。

「そうでしたね。でも、あのとき考えたのはそれを逆手にとること。5人ぐらいしか集まらないんじゃ意味がない。それで、東口とか酒井高徳、原口、西、森脇とか、既にシーズンが終了している、いい素材の選手を貸してくれと。それで紅白戦できる人数を揃えた。その中から、関塚(五輪代表監督)の眼にとまる濱田のような選手も出てきたし、森脇はアジアカップのメンバーに入った。槙野がケガしたんでね。西もあとで代表に入った。それはいいほうに回ったかなと思ってます」

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