気になったプレーインテンシティの低さ
広州恒大から鳴り物入りで加入したクレオに関しても、まだまだフィジカルコンディションが高まっていないようだ。クレオは柏のキャンプへ合流する前、広州恒大のチームから離れて40日間ほど個人トレーニングのみを行っていたということで、ネルシーニョ監督も「コンディションが戻るのを待っている状態」と語っている。
クレオ本人は「先週ちばぎんカップを戦ったときよりもチームに溶け込めていると感じます。チームのフォーメーションが変わっている中で、それに合わせるように自分もフィットしてきていると思います。コンディションは完璧ではないですけど、試合に挑むごとにコンディションは良くなってはくるので、徐々に上がってくると思います」と話していた。状態は良くないなかでもポテンシャルの高さが垣間見えるプレーは出ていただけに、どれだけ早くフィットするかによって、柏の序盤戦の戦いは大きく変わってくる。
また、右ウイングバックとしてフル出場を果たした新加入のキム・チャンスは、立ち上がりこそコンビネーションでギクシャクする場面があったものの、試合が進むごとに能力の高さを見せた。マッチアップした清水は強烈なスピードを持つ選手だが問題なく応対ができていたし、なおかつ前線でレアンドロ・ドミンゲスと良好な関係を築いていた。もともと能力の高い選手だけに、コンビネーションの精度が高まっていけば、酒井宏樹の移籍以来失われていた、右サイドのホットラインが復活する可能性は高い。
新潟から加入した鈴木大輔に関しても、慣れない3バックを順調にこなしており、リードされて迎えた終盤の時間帯にはドリブルで何度か持ち上がって右サイドの攻撃に厚みを加えるなど、“今何をすべき”かという状況判断に優れた部分を見せた。柏にとって大きな補強になったのは間違いないだろう。
クレオのコンディションに関しては不安が残るが、キム・チャンス、鈴木大輔の新加入選手が自分の力をしっかりと発揮できていたことは柏にとって好材料だ。一年間のスケジュールを考えれば、柏がこの試合にコンディションを合わせることはあり得ず、序盤戦を戦っていく中で徐々にチーム全体が高まっていくようなマネジメントを行っているはずだ。それを考えると、負けたとはいえ柏にとっても収穫のある試合だったと言えるだろう。
ただ一点気になったのは、両チームの“プレーインテンシティ”(プレーの強度)の低さだ。昨年はなるべくプレーを流す傾向で笛を吹いていたが、今回の東城主審の基準を見ると、今年はその傾向が少し変わるのかもしれない。リーグ戦の開幕前、しかもすぐにACLを控える日程であり、両チームが怪我のリスクを負いたくないというのは十分に理解できる。しかしながら、ゼロックス・スーパーカップはJリーグの試合がキー局の地上波で放送される、年に数度しかない貴重な“Jリーグをアピールすることのできる舞台”なのだ。
その貴重な舞台で、何でもないフィジカルコンタクトに何度も笛が吹かれ、軽い接触で不満を露わにする選手たちを見るのは残念でならない。視聴者はゼロックスを見たあと、すぐにマンチェスター・ユナイテッドの試合を見られる環境にあるのだから。日本サッカーが世界で勝っていくためには、常に高いプレー強度を追い求め、観る側がそれを当たり前のものとして共有することも一つの重要な手段になる。そういう側面から見ると、少々物足りなさを感じるカップ戦の決勝戦だったと言えるのではないだろうか。
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